近畿大学(大阪府東大阪市)が、企業と共同開発した商品を次々と市場に投入し、大学の存在感を高めている。
その商品も、カップラーメンや化粧品、子供用玩具など多彩で、目指すのは、まるで“総合商社”。
企業の商品開発を陰で支える従来の「産学連携」とは一線を画し、商品名に大学名を入れたり、販売店舗に 教員や学生も販売員として投入したりと、さまざまな仕掛けで大学のブランド力を高めている。
世界で初めてマグロの完全養殖に成功した近大。
その近大マグロの中骨を使って、今度は即席麺大手のエースコック(大阪府吹田市)とカップラーメン商品「近畿大学水産研究所監修 近大マグロ使用 中骨だしの塩ラーメン」を開発した。
商品名に「近大マグロ」の文字を採用。
昨年12月1日から全国のスーパー やコンビニエンスストアで大々的に発売を始めた。
近大マグロの全国的な知名度が強みで、エースコックの担当者は「発売3カ月間で150万食の販売を目指す」と強気だ。
商品名にも書かれている「中骨」は、実はこれまで、近大が大阪と東京で運営する料理店「近畿大学水産研究所」で提供する近大マグロ料理に唯一、使われていなかった部分だ。
それを有効活用し、骨から炊き出したエキスをスープに使用。
「しっかりとしたうまみや深いコクを味わっていただけるように仕上げた」(エースコックマーケティング部広告宣伝グループ)のが“売り”だ。
この商品開発は、近大側からエースコックに話を持ちかけた。
その狙いについて、近大の担当者は「近大ブランドの向上もあるが、これまで使用していなかった中骨を活用することで、エコ活動の展開にもつなげたい」と説明する。
近大が送り出す商品の勢いは止まらない。
薬学部はクロモンコスメティック(大阪市中央区)と技術協力し、スッポンのコラーゲンを使用した化粧品「クロモンジェル美容液」を市場に投入した。
関西を中心に販売し、約7,500個を売り上げた。
昨年12月10日からは東京でも販売を始めた。
近大は、東京販売の初日、開発した准教授や学生らが店頭に立ち、消費者を相手に商品の特性を説明するなどした。
近大の担当者は「売れ行きや消費者の反応などを実際に確かめることで、今後の研究や商品開発に生かせるほか、学生にも実学を身につける機会になる」と指摘する。
これとは別に、文芸学部は、段ボールケースなどを手掛けるマツダ紙工業(東大阪市)と共同で段ボール製のテント「トゥインクル・テント」を開発し、子供用玩具として売り出した。
家の中で遊ぶ組み立て式で、リサイクルしやすいほか、軽くて安全な強化段ボールを使用。
手軽に大きさを変えることもできる。
近大の産学連携の実績を裏付けるデータがある。
文部科学省の平成25年度調査によると、近大は「民間企業からの受託研究実施件数」で堂々の全国1位(254件)に輝いた。
2位は立命館大(242件)、3位は早大(218件)。
近大は、平成21年度の受託研究件数が126件(全国9位)だったが、これを4年間で一気に倍増させた。
近大の担当者は今後も産学連携について「大学の研究成果をどんどん社会に発信していきたい」と意気込んでいる。
【香西広豊】
産経新聞より