海と陸の不要物が農家の“助っ人”に――。
生コンクリートの製造や廃棄物のリサイクルを手掛ける吉田レミコン(青森県八戸市)は、宮城県登米市の水稲農家と宮城大学と連携し、水道水の生成時に発生する「浄水発生土」とカキ殻を再利用した土壌改良資材を開発した。
水田に施用すれば米の収量増や倒伏防止が期待できる。登米市内で試験を重ね、製品化を目指している。
浄水発生土とは、水道水を生成する際に取り除いた河川の土砂や、浄水処理に使う活性炭などを集めた土のこと。
宮城県内では毎年約9万2,000トン発生している。
主にセメント原料として再利用されているが、行政側がセメント工場までの運搬費を負担しなくてはならなかった。
一方、カキ殻は毎年約2万~6万トン発生。
港湾の埋め立て資材などで活用する以外は、空き地などに積み上げられたままだ。
そこで、同社は厄介ものの浄水発生土とカキ殻を農業分野で生かせないかと考え、登米市で水稲と和牛繁殖を経営する須藤勇一さん(65)らに相談。
「収量増と資源の利活用の両面で貢献できる可能性がある」と試験栽培を快諾。
2009年から施用が始まった。
2013年産は、浄水発生土にカキ殻などを加えた土壌改良資材を10アール当たり100キロ施用したところ、非施用の水田に比べ収量が約550キロと1割以上増加した。
生育や倒れにくさに関係する根の長さは、最大7.6センチと、施用しない場合と比べて8ミリ長かった。
土壌分析などを手掛けた宮城大学食産業学部の木村和彦教授(土壌肥料学)は「(土壌改良資材に含まれる)ケイ酸が水に溶け込みやすく、生育の良さにつながっている」とみる。
年度内にも2014年産米の食味や土壌の分析をまとめる。
同社は、同市内の農家に試験施用を引き続き依頼し、実証データを蓄積して今後、数年以内に製品化する方針。
須藤さんは「海と山の資源の再利用という新たな価値を米に付けられる」と期待を込める。
日本農業新聞より