大手電力が蓄電池の余力を集約して仮想発電所として使う「バーチャルパワープラント(VPP)」の実証に乗り出している。
電気自動車(EV)などの普及を視野に、既存の蓄電池を活用して投資を抑制。
出力が変動する太陽光発電など再生可能エネルギーの調整力などとしても期待が大きく、大手電力は異業種とも連携して事業化を加速している。
「目指す3つの軸は、脱炭素化、BCP(事業継続計画)、新たな基盤サービスの創造だ」。
東京電力ホールディングスの小早川智明社長は今月18日、NTTとの業務提携の発表会見で、こう述べた。
両社は折半出資する新会社「TNクロス」を7月に設立し、今後3年以内に新規事業の立ち上げを目指す。
提携の最大の狙いは、NTTが電話局やデータセンターなどを置く通信ビルにある非常用蓄電池の活用だ。
NTTは関東で通信ビル1,200カ所を保有し、各拠点に蓄電池を備える。
現在は鉛蓄電池が主流だが、小型のリチウムイオン電池に置き換えを進める。
同じスペースでも容量が拡大し、蓄電池の余力は東電と合計で300万キロワット時まで増やせる見込み。
100万件の住宅が1キロワット時の電力を3時間続けて使える容量で、東電は余力をVPPとして活用し、「再エネの大量導入を支援する」(小早川社長)。
関西電力は1月から、EVなど60台をVPPとして活用する実証を開始した。
住友電気工業とEVの充電を遠隔制御する装置を共同開発。
日産自動車のEVを使い、利用者は参加するかどうかをスマートフォンで確認するだけで、VPPの電源として活用することを目指す。
一方、中部電力はトヨタ自動車と連携し、ハイブリッド車(HV)などの使用済み蓄電池を再利用。
蓄電池システムとして、再エネの調整用電源として利用する実証を始める。
蓄電池の再利用で「資源循環型社会」を目指しつつ、再エネ普及を後押しし「低炭素社会」にもつなげる狙いだ。
東北電力も4月に、仙台市とVPPの実証開始を発表。
仙台市が災害時の指定避難所に設置している太陽光発電や蓄電池の電力を集約し、活用する。
今年度中に5カ所で開始し、20年度までに計25カ所で実証する方針だ。
SankeiBizより