全国各地のダムが観光名所として人気を集める中、ご飯で“堤防”をつくってダムを模したご当地「ダムカレー」が人気だ。
その数、全国でざっと140種類。
JAが観光客を誘致しようと特産牛を使ったカレーを考案、自営のレストランで提供を始める取り組みも出てきた。ダムカレーが地産地消を後押しする。
ダムカレーは、ご飯を堤防、ルーを貯水池に見立ててダムの景観を表現。
ダムの近隣にあるレストランなどで提供され、地場産農産物をPRする役割も果たす。
JA阿新は、地域の景観と食材を生かした「千屋牛ダムカレーBLACK」を、直営の焼き肉レストランでメニュー化した。
管内の新見市は高梁川源流域に位置し、六つのダムが流域の治水・利水に大きな役割を果たしている。
「A級グルメの町」を自負する同市では、市民有志が「にいみライスカレー協会」を結成。
市内の飲食店やイベントで、ダムカレーを提供しており、JAも取り組みに賛同。
カレーを通じて市外からの訪問客を増やし、地域活性化に貢献する。
「千屋牛ダムカレーBLACK」は、見た目、味わいともに「千屋牛」にこだわった。
地元産米粉をベースにイカ墨を加え、黒毛和種の色にしたカレールーでダム湖を表現。
「にいみ源流米コシヒカリ」をアーチ形に盛ってダムに見立て、牛の顔を模した黒ニンニクを添えた。
トッピングも地元産中心で「千屋牛」の焼き肉ロース、千屋牛コロッケ、温野菜から選べる。
考案した「焼肉千屋牛」の職員、池田克さんは「ルーを作るのに苦労したが、まろやかな味わいに仕上がり子どもにもお薦め。
新見の魅力を満喫してほしい」とPRする。
価格は1250~750円。
ランチ限定で1日20食を提供する。
“ダムライター”の宮島咲さん(46)が立ち上げたホームページ「日本ダムカレー協会」によると、全国に約140種類のダムカレーがある(3月6日時点)。
北海道今金町の複合レジャー施設クアプラザピリカ内のレストランは、町内産の軟白ネギやジャガイモ「男爵薯」、シイタケなどを使って「ピリカ(美利河)ダムカレー」を提供。
季節の景観に合わせ、冬はホワイトカレーにする工夫も。
小西義行支配人は「観光客に人気で、1日に20食以上出る」と話す。
1月にデビューしたのが山形県朝日町の「上郷ダムカレー」。
地元企業オーエが、地場産野菜と最上川本流で唯一のダムをPRし活気をもたらそうと、運営する「たんぽぽ食堂」で提供する。
水曜日に15食を限定販売する。
他にも、熊本県菊池市で地場産の米やキクイモ、ゴボウを使って市交流促進センターが提供する「竜門ダムカレー」、滋賀県甲賀市の旅館「大河原温泉かもしか荘」が提供する、鹿やイノシシの肉を使った「野洲川ダムカレー」なども人気だ。
宮島さんによると2009年ごろから、人口減少の進む村でダムカレーが広がってきた。
ただ、「ご飯が堤の役割を果たしていない安易で平面的なものも出てきた。
ダム愛好家のためにも地域のダムをPRするためにも、リアルさを追求して」と求める。
日本農業新聞より