31日、タウは同社のCSR事業のひとつとして2月から「願いのくるま」を始めると発表した。
怪我や病気などで、ターミナルケアを受けている人の思い出の場所に行きたい、あるいは孫の結婚式に出たい、という希望を医療設備やスタッフの揃った車両で実現するというボランティアサービスだ。
同社は昨年10月よりプロジェクトをスタートさせ、1月19日には「一般社団法人願いのくるま」を設立した。
代表理事はタウ名誉会長原田眞氏、理事にはタウ代表取締役社長宮本明岳氏がそれぞれ就任する。
活動スタッフは、社内公募で名乗りを上げた20名から選抜した5名。
2月には1件目の事例をスタートさせたいといい、1年後には協賛企業を募って公益社団法人化し、全国へも活動を広げる考えだ。
終末期、ターミナルケアの患者が望む場所に連れていくというボランティアは、とくにヨーロッパでは一般的だ。
日本でも家族や友人が可能な範囲で患者の外出を行うことはあるが、願いのくるま事業は、民間の医療輸送サービス・救急搬送サービスの車両を利用し、関係する医療機関やホスピスのスタッフ、家族らとともに指定の場所まで送迎してくれる。
車両は酸素ボンベ、吸引器、AEDなど基本的は装備を備えたもの。
外出にあたっては、担当医師の許可が必須となり、車両には看護師が同乗する。
ルート上の医療施設などを調べ、同乗のボランティアスタッフとともに万が一の事態にも対処する。
当面は、タウ本社がある埼玉県を中心に、車で日帰りできる範囲となるが、将来的には拠点を増やしたり、協力してくれる医療機関、自治体などと共に活動を全国に広げたいとする。
利用者の費用的な負担はかからないが、車両やスタッフはボランティアベースとなる。
すでに
「日光東照宮に行きたい」
「昔住んでいた家にいってみたい」
「桜を見に行きたい」
といった具体的な希望が寄せられているという。
また「はなみずきの家」「ホームホスピスきりんの家」が協力を表明しており、保険会社やディーラーなども活動に興味を示しており、公益社団法人化の準備も進めている。
タウは、事故や災害などで廃棄になるような損害車を買い取り、国内外の事業者に販売するビジネスがメインの会社だ。
今回の「願いのくるま」事業を始めるに至った背景と意気込みについて宮本社長は次のように語る。
「ひとつは企業として社会貢献をしたいという思い。もうひとつは会社の認知度向上・ブランド価値の向上につなげたいというのもあります。本来社会性の高いビジネスである、損害車の売買は、一部の人にはいい印象を与えないこともある。社員にもつらい思いをさせているかもしれないが、仕事に誇りを持ってほしい、また一般の人にも知ってほしい。」
自動車競技などをやっていれば、部品取りのため同一年式の事故車をあえて買うことは珍しくない。
事故車の買い取りはむしろ普通であり、部品の再利用、リサイクル、あるいは海外市場でのモータリゼーションエコシステム(修理費が安い海外では損害車の商品価値は高い)にも役立っている。
現状は民間の救急車などを利用するが、ゆくゆくは買い取った損害車や中古車を修理・改装し、専用車両で願いのくるま事業を行う予定だ(宮本社長)。
過疎地や都市部の移動・交通問題の解決に、シェアリングエコノミーや自動運転技術が期待されているが、今後は願いのくるまのような福祉・ボランティア活動への応用が広がるかもしれない。
【中尾真二】
レスポンスより