世界トップ水準のものづくり技術を持つ中堅・中小企業が、工業製品の国際団体による「国際標準」の認定を取るよう経済産業省が働きかけている。
業界標準が勝ち取れなければ、技術で先行しても海外勢との市場競争で敗れかねない。
高度な技術を持つ企業は地方にも散在しており、経産省は“埋もれた宝”を発掘する全国行脚を始めた。
「参加企業の関心はとても高い。地方発の国際標準の誕生が期待できそうだ」(基準認証政策課)
経産省は、全国各地の産業集積地などに着目し、国際標準化の重要性などを解説する周知セミナーの開催に乗り出した。
まず10月に「刃物のまち」として知られる堺市で開催。
今月中旬には静岡県浜松地域で開くほか、今後、10地域前後で地元関係者らと開催を調整中だ。
国内では、文具や食器をはじめ、あらゆる製品の品質規格である「JIS(日本工業規格)」がある。
これと同様に、国際的な規格として、電機機器の国際標準を国際電気標準会議(IEC)などが定めている。
国際標準の種類は、通信技術の規格やプラグの接続口など多岐にわたる。
携帯電話の通信規格や光ディスク録画再生機の技術規格のように、標準化で敗れれば撤退を余儀なくされるケースもある。
そのため経産省は、競争を優位に運べるように日本発の国際標準を増やそうとしており、5月には「標準化官民戦略」を策定。
同戦略は「中堅・中小企業が持つ海外勢がまねできない独自技術」(経産省幹部)を重視し、自社技術の国際標準化を目指す中堅・中小の提案作業を支援してきた。
これによる成功事例も出ている。
目立つのが品質評価をめぐる国際標準化だ。
時計やエレクトロニクス機器に使われる水晶デバイスには、国際規格の品質区分が上位のAから下位のEまで5ランクあった。
品質が高ければ正確に時刻を計測できる性能証明になる。
高品質で知られる東京都内のあるメーカーは、Aランクの中でも特に高い品質を出す製造技術を持つ。
そのため、IECに提案し、Aランクの上に新たに「Aa」の新区分を作ることに成功。
Aa品質の自社製品を他社製から差別化し、より高額で取引される高級品市場でシェア(市場占有率)を拡大させた。
企業が国際展開を加速する中、製品の買い手には国際標準に基づく性能・品質評価が一段と重みを増している。
経産省は、一連の支援活動で企業の競争力を底上げし、地方経済の活性化につなげたい考えだ。
【塩原永久】
SankeiBizより