乳がん患者と家族を支援する長崎県佐世保市のNPO法人「葵会」は、使わなくなった医療用ウィッグを集める取り組みを始めた。
7月末には初めて提供を受けた。
一定数を集め脱毛に悩むがん患者に贈る予定。
代表の吉村市代さん(61)は「つらい思いをしている患者に『応援しているよ』と伝えたい」と意気込む。
脱毛は抗がん剤治療の主な副作用の一つ。
吉村さんによると、ウィッグは外出の際や仕事で人に会うときに重宝するが、オーダーメードでは数十万円するほど高価という。
外見の変化に伴う精神的負担を和らげるとともに、経済的な負担を除こうと呼び掛けを始めた。
「人を思いやる人だった。きっと喜んでいるはず」。
初めて提供してくれたのは佐世保市の主婦、前田真由美さん(41)。
5年前に骨のがんで亡くなった母親のウィッグを寄贈した。
つらい思い出がよみがえるため、しまい込んでいたが、知人から葵会の活動を聞き探し出した。
「看護師だった母でさえ、髪が抜けたときはショックを受けていた。眠らせるより誰かの役に立ってほしかった」と前田さん。
「病気になると見た目は後回しになりがち。『ああ良かった』と思ってもらえれば」と思いを寄せる。
葵会は10個を目標にイベントなどで協力を呼び掛ける。
一定の数が集まれば病院などで展示会を開く方針。
吉村さんは「がんは治療も長く周囲の環境や自分自身にも変化が起こる。
『一人じゃないよ』という気持ちや患者同士のつながりも届ける取り組みにしたい」とする。
長崎新聞より