コウゾに代わり新たな原料で和紙作りに挑む農高も出てきた。
岩手県立遠野緑峰高校(遠野市)は、全国トップの生産量を誇るビールの原料ホップのつるを100%使った和紙の開発に成功した。
既に地元のホップ生産組合が和紙で作った名刺を愛用するなど、アイデアが形になっている。
「ホップを作る農家を元気にしたい」という農高生のいちずな思いが花開いた。
開発を手掛けたのは同高草花研究班の3年生、8人。
ホップは遠野市特産で、つるは10メートル以上もあり、ほとんどが利用されずに焼却処分されていた。
こうした現状を知ったメンバーは「もったいない」と昨年9月から再利用に向けた研究を開始。
農家からつるには繊維が豊富に含まれていると聞き、和紙にしようと考えた。
だが、失敗の連続だった。つるを細かく切断してゆでるなど、さまざまな方法で試してみたが、当初は牛乳パックなどと混ぜなければ紙にできなかった。
農家に、他の繊維と混ぜたホップ和紙を見せたところ「本物ではない」といわれ、実験を繰り返す日々が続いた。
めどがついたのは、県内の和紙工房に調査に行き、天然和紙の原料となる「コウゾの皮に繊維が詰まっている」と教わってから。
試しにホップの表皮を剥いで みたところ、繊維を発見。
表皮を剥がしやすくする方法や、煮てから繊維をほぐし、漂白するまでの一連の工程を研究し、4月に100%ホップの和紙が完成。
つる1キロからA4判の和紙1枚を作る技術を確立した。
「100%ホップの繊維で和紙を作ることは無謀と言われたけれど、諦めないで研究を続けてきた。完成した時、農家の喜ぶ顔が思い浮かんだ」と同班リーダーで3年生の新田和也さん(17)。
早速、地域への普及を始めた。
まずは、地元のホップ農協の役員らに名刺を作ってプレゼント。
その後、市長らにも名刺を提供し、現在は地元ホテルと連携し、和紙を使ったしおりを1枚200円で販売。
希少性が受けてホップ和紙で作った名刺やしおりは注文が「殺到している」という。
今後は、企業と提携して和紙を酒のラベルにしたり、遠野市に避難している東日本大震災の被災者を対象に和紙作りの講習会を開いたりする計画だ。
10月22、23日に沖縄県で開かれた日本学校農業クラブ全国大会では文部科学大臣賞を受賞、高い評価を得た。
活動を応援してきたホップ農家の安部純平さん(58)は「何度も実験を重ね、そのたびに良くなっていき、感激した。遠野の新たなおみやげ品になり、地域の起爆剤になると確信している」と喜ぶ。
日本農業新聞より