プラント建設大手のJFEエンジニアリングの子会社で、新電力のアーバンエナジーが廃棄物を活用した新しい電力供給サービスを開始した。
横浜市にある「横浜国際平和会議場」(通称:パシフィコ横浜)の施設から回収した廃棄物を利用して発電を行い、その電力を割引価格で回収元の施設に供給する。
電力需要家側の資源リサイクルと、電気料金の削減に同時に寄与する新電力サービスだ。
アーバンエナジーが電力供給を行うのは、パシフィコ横浜が管理する「臨港パーク」という海岸沿いの緑化エリアだ。
パシフィコ横浜は臨港パークで消費する全電力は、アーバンエナジーから購入する。
契約容量は65kW(キロワット)で、2017年4月2日から一般家庭約100世帯分に相当する年間30万kWh(キロワット時)を供給する計画だ。
供給する30万kWhのうち、約12%はパシフィコ横浜の各施設から回収した廃棄物を利用して発電した電力になる。
廃棄物の回収はJFEエンジニアリングの100%子会社であるJFE環境が担当しており、同社が運営する産業廃棄物処理施設で焼却・発電する。
この電力をアーバンエナジーが買い取り、臨港パークに供給するという事業スキームだ。
国際会議の開催などで国内トップの実績を持つパシフィコ横浜は、環境負荷の低減に向けた取り組みを進めており、施設内で集めた全てのごみの計量や記録を徹底し、廃棄物の完全把握と100%リサイクルを目指している。
アーバンエナジーはパシフィコ横浜から回収した廃棄物で発電した電力を、通常の電気料金より数%安い価格で臨港パークに供給する。
リサイクルと電力コストの削減を両立させる取り組みだ。
JFEエンジニアリングはこうした廃棄物の提供を受けた施設に対し、割安な電力を供給するサービスを「創電割(そうでんわり)」として他の需要家にも展開していく方針だ。
電気料金の割引率は、廃棄物の処理量に応じて変動する仕組みとなっている。
JFEエンジニアリングはプラント建設に関するノウハウを強みに、廃棄物を利用した新電力事業の拡大に注力している。
2017年3月7日にはJFE環境、東日本旅客鉄道(JR東日本)および同社100%子会社の東日本環境アクセスと共同で、食品廃棄物を利用した発電事業を開始すると発表した。
JR東日本の駅ビルや商業施設から発生する食品廃棄物を発酵させてメタンガスを作り、これを燃料としてバイオガス発電を行う計画だ。
共同出資会社のJバイオフードリサイクルを設立するとともに、新たに横浜市鶴見区に出力1,800kWのバイオガス発電所も建設する。
発電所は2018年中の完成を予定しており、一日当たり約80トンの食品廃棄物を利用してメタンガスを生成し、年間に一般家庭3,000世帯分の使用電力量に相当する1,100万kWhを発電する計画だ。
発電した電力は施設で利用する他、FITを活用してアーバンエナジーに売電する。
このようにプラント建設や発電のノウハウを持つJFEエンジニアリングが廃棄物を排出する異業種との連携を進めることで、アーバンエナジーの電源を拡張できるメリットもある。
JFEエンジニアリンググループの新電力であるアーバンエナジーは2013年12月に設立。
四国や北陸、沖縄を除く全国で高圧向けの電力供給を行っており、2016年度の電力販売実績は53万6,00kWhを見込んでいる。ごみ焼却発電やバイオマス発電、太陽光発電など、JFEエンジニアリングが建設および運営に関わる発電設備を主な電源としており、再生可能エネルギー電源の拡大も進めている。
熊本県水俣市では、市内に水力発電所を保有するJNCと協力し、再生可能エネルギーに特化した電力供給サービスも実証中だ。
JFEエンジニアリングが所有する再生可能エネルギー発電設備とJNCの水力発電所の電力を、アーバンエナジーを通して水俣市の施設に供給する。
CO2排出量や電気料金の削減効果を確認した後、3者共同出資による地域エネルギー会社を設立する方針だ。
この他、静岡県磐田市でも地域エネルギー会社「スマートエナジー磐田」を市と共同設立するなど、官民連携の電力供給サービスの展開も図っている。
スマートジャパンより