宇部興産はセメント製造の主力拠点である伊佐セメント工場(山口県美弥市)で排熱発電設備を新設する。
セメントをつくる過程で排出される熱を回収して発電や原料乾燥用の熱源として再利用する。
エネルギーの有効活用で工場の電力自給率を100%に近づけ、二酸化炭素(CO2)の排出量を最大10%減らす。
投資額は70億~80億円。
2017年度に着工して2019年度の稼働を目指す。
宇部興産はセメント工場での環境対応を進めるため、まず2016年1月に苅田セメント工場(福岡県苅田町)で排熱発電設備を稼働させた。
主力拠点の伊佐工場でも同様の仕組みを導入する。
セメント工場では石灰石や廃棄物などを砕いて混ぜた原料を「キルン」という回転窯の中でセ氏1,500度近い高温で焼き固め、中間製品の「クリンカー」をつくる。
伊佐のクリンカー生産量は年380万トンで国内有数の規模を誇る。
新設する排熱発電設備は伊佐工場に2基あるキルンの1つに入れる。
原料をいったん800度程度で仮焼する予熱装置から出る排熱を回収し、ボイラーで発電する。
ボイラーからの排熱は原料の乾燥に使う熱に再利用する。
またキルンでつくられたクリンカーを急冷させた時にでる熱も回収して発電に使う。
伊佐工場では既に出力約5万7,000キロワットの自家発電設備があり使用電力の9割を賄っている。
新設備の導入により、原油価格などに影響されやすい外部購入による電力を削減。
工場で使用する電力のほぼ全量を自給できる体制にする方針だ。
エネルギーの有効活用で燃料使用量とCO2の排出も抑える。
伊佐工場のエネルギー原単位(製品量に応じたエネルギー利用量)は10%改善できるという。
伊佐工場ではCO2を年148万トンを排出していたが、最大10%を削減する。
宇部興産の松波正取締役は「コスト削減を進めて高効率な工場にしたい」と話す。
セメントの国内需要は2020年の東京五輪に向けて特需が期待されるが、中長期的には公共投資の縮小や人手不足による施工数の減少で伸びは見込みにくい。
収益性を高めるため、運営の効率化が課題となっていた。
【古川慶一】
日経産業新聞より