飲食店や集合住宅などに設置されている液化石油ガス(LPG)タンクが初の更新期をまもなく迎える。
製造後20年を過ぎたタンクは通常廃棄されるが、高圧ガス設備保安会社のガス検中部(静岡市駿河区)は、雨水タンクとしての再利用を提案し始めた。
ユニークな問題解決策として注目されそうだ。
LPGタンクは1997年の液化石油ガス法改正を受けて急速に普及した。
設置場所で燃料運搬車からタンクへ直接ガスを補充する。
家庭用ボンベよりも容量が大きく、燃料を効率的に供給できる利点がある一方、20年を過ぎた設備は保安検査が同法で義務付けられている。
検査時期を迎えるタンク(内容量2.9トン以下)は全国で2017年に約5,200基、ピークの24年には約3万2千基に上る。
検査やその後の維持に必要な経費を考慮すると、タンクの交換に踏み切る設置者が膨らむとみられている。
ただ、使い古したタンクの廃棄コストをどう賄うかが課題だ。
新興国経済の減速で鉄くず価格が低迷する中、廃棄を担う業者が鉄くずの売却益でコストを吸収するのは難しいのが現状という。
そこでガス検中部は雨水タンクへの再生・販売の事業化を検討。
耐久性や密閉性に優れたLPGタンクは雨水をためる性能を十分に満たす。
廃棄されたタンク内部を洗浄し、関連装置を取り付けて「雨水さん」の名称で販売する。
家庭用ボンベの再生も2年前から手掛けている。
「花型の傘立て」「物入れにも使える椅子」などに形を変えてネットショップで販売し、反響や売れ行きは想像以上という。
白砂啓司社長は「都市災害時の予備貯水槽として再生させたい。タンク交換時に設置者に重い負担が掛からず、設備更新期を円滑に乗り切るための方策になれば」と話した。
静岡新聞より