地震や強風、洪水などの自然災害などで見るも無残に破壊された太陽光パネル。
熊本地震では、パネルを取り付けた住宅が倒壊したさまが連日のように報道されている。
これら使用不能となった太陽光パネルは産業廃棄物として処理されるが、実は2040年度には廃棄される太陽光パネルが膨大な量になるという試算がある。
昨年6月に環境省が行ったもので、2014年度に年間約2,400トンだった廃棄量が、40年度には年間約80万トンに膨れ上がるという(下図参照)。
実に10トン積みの大型ダンプカー約8万台分に相当する。
そもそも太陽光発電が急速に普及したのは、2011年の福島第1原子力発電所の事故によりエネルギー政策の見直しが行われ、2012年に太陽光や風力など再生可能エネルギー普及のための「固定価格買取制度(FIT)」が導入されたことによる。
導入当初は普及促進のため買い取り価格が高めに設定され、それまで住宅用の小型の太陽光パネルがメーンだったところに、メガソーラーなど産業用の大型の太陽光パネルが一気に製造された。
中には投資を目的とした事業者の参入も相次ぎ、まさに“太陽光バブル”といえるありさまだった。
ところがだ。
買取制度には期限が設けられている。
住宅用の買取制度は10年間で終了し、産業用は20年間で終わってしまうのだ。
そこに太陽光パネルの寿命が重なるとどうなるか。
メーカーによって違いはあるものの、寿命はおおむね20~30年。
つまり、太陽光パネルの寿命が終わると同時に投資対象としての魅力もなくなり、太陽光発電から撤退する事業者や投資家が一気に増える可能性が高い。
その後は、大量のごみの山が築かれるというわけだ。
住宅用の買取制度は10年で終わるとはいえ、小型だから廃棄物の量はそれほどでもない。
問題なのは、産業用の買取制度が終わる20年目、すなわち32年度以降だ。
そこで慌てた環境省は今年4月、「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン」を発表したが、今は各事業者に処理を委ねているのが現状だ。
海外大手パネルメーカーも「この数年内には対応したい」と言及するにとどまり、いまだ対策が立てられていないことを暗に示す。
加えて、太陽光パネルには銀や銅など資源価値の高い金属も含まれるが、パネル表面のガラスは資源としてほぼ無価値。
仮にリサイクルしてもガラスを分離する技術が発達しておらず、コストが掛かる。
現状では、埋め立て処分の方が安上がりなのが実態だ。
エコなはずの太陽光発電だが、このままでは不法投棄や埋め立て地の不足など、深刻な環境問題を引き起こしかねない。
早急な対策が求められている。
【大根田康介】
ダイヤモンド・オンラインより