高い省エネ性能を誇るオーダーメードの送風機で競合他社との差別化を図るのが日本機械技術(東京・中央)だ。
製造現場では欠かせない存在という送風機だが、製鉄所などで使用する全電力の相当部分を占める。
省エネ送風機はコスト削減だけでなく、地球温暖化の抑制にも貢献する。
「実は送風機は多くの電力を消費する機械。効率の高い省エネ商品に替えれば、浮いた資金を次の投資に回すことができる」と西藤彰会長(79)は力説する。
同社は西藤会長が1973年に設立した、国内でも数少ない産業用送風機専門メーカーだ。
開発から設計、製造、施工、販売までを一貫して行う。
送風機は製造現場の至る所に置かれている。
例えば、粉状の物質を運ぶ場合に利用する。
コンテナに入れて運ぶよりも、風の力で配管の中を飛ばしてやる方が効率がいいという。
また用途は送風だけではない。
製鉄所で生じる燃えかすなど、人体に悪影響のある粉じんを集める目的にも使われる。
西藤会長によると、工場で消費される全電力のうち、製鉄所なら約60%、セメント工場なら約40%、製紙工場なら約20%を送風機の電力が占めるという。
「世間にはあまり知られていないが、大きな工場には用途別に様々な送風機が設置されている」(西藤会長)
工場の消費電力の無視できない比率を送風機が占めるなか、日本機械技術は高い省エネ性能を実現してきた。
同社の送風機に入れ替えることで1~3割程度、電力消費を抑えられるという。
同社は徹底したオーダーメード製品に仕上げることで無駄をなくす。
「送風機の寸法やボルトの位置、羽の形や角度などがわずかに合わないだけでも、送風機としての力を十分発揮できない」(西藤会長)。
このため送風機を新たに設置する際には、図面作りの専従班が現場に入り寸法などを調整する。
西藤会長が約50年の歳月をかけて積み重ねてきた流体力学の知見も生きる。
送風機の内部は鋭い角をなるべく減らし、滑らかな曲線を多用する。
乱流や渦流が起こりにくくなり、気体が効率よく流れることで騒音や振動の低減にも効果を発揮する。
工場の作業環境を向上する役割も果たす。
こうした技術力を背景に、高度経済成長期に工場に設置され、老朽化を進む既存の送風機との入れ替え需要を見込む。
送風機の羽根の摩耗に苦労していたある製鉄所から相談を受けた際には、羽の形状を変えた。
これまでに3カ月に1度の羽根の交換が必要だったが、置き換えてから4年間、メンテナンスせずに済んでいるという。
大型送風機の消費電力に悩んでいた窯業会社の装置を置き換えた際には、1時間当たり320キロワットの節電を実現した。
工事費用を含めて数年でコスト回収できた。
騒音の問題も解決したという。
また同社の送風機を導入した大手の化学メーカーは年間で約1,400万円の省エネ効果を得られたという。
西藤会長は「単なる送風機メーカーではない。省エネで飯を食ってきた。同じ性能なら消費電力が世界トップレベルに少ない製品を作っている」との自信を見せる。
送風機の導入費用は数百万円から数千万円程度。
節電に貢献するため、多くのケースで2~3年立てば費用を回収することができるという。
起業のきっかけは1971年に、西藤会長が旧西独の送風機メーカーに視察へ訪れたことだ。
日本の送風機と比べて10%程度効率がよい技術力に圧倒された。
送風機は製造現場の至る所で使われる必須の機械だ。
「日本の技術は負けている。このままでは国力の差につながる」と危機感を抱き独立。
1973年に日本機械技術を設立した。
技術力を駆使して、さらに省エネ性能の高い送風機作りを目指す。
「欧州に負けない企業に育て上げる」(西藤会長)と今も暑い思いのもと仕事に挑む。
【黒田弁慶】
日経産業新聞より