ガス管や橋脚などインフラの保守点検は難しい。
危険な場所にあったり、見えづらい構造になっていたりすることが多いからだ。
サーフ・エンジニアリング(神奈川県綾瀬市)は難所でも簡単に点検できるロボットを開発し、注目を集めている。
全国的にインフラの老朽化できめ細やかな点検の重要性は増している。
根本秀幸社長は「100年先の安心安全を担保する事業を進めたい」と話す。
2月下旬、綾瀬大橋(綾瀬市)の下で、ロボット「橋脚用のぼるくん」の実証実験が行われた。
特殊なタイヤがつけられた幅6メートル、奥行き3メートルの機械が高さ11メートルの橋脚を囲み、ゆっくりと昇っていく。
カメラが付いており、傷やひび割れを地上で確認できる。
200キログラムのおもりを付けたり橋脚を水でぬらしたりして、人や機械を乗せても重さに耐えられるか、雨天でも使えるかなどを確かめた。
同社は2004年創業で機械加工などを手掛ける。
注目されるきっかけはガス管点検用ロボット「のぼるくん」の開発だ。
標準で直径1メートル、重さ40キログラムほど。
特殊なタイヤが付いた円形のロボットがガス管を囲んで、はうように進み、取り付けられたカメラで傷の有無などを確認する。
ガス管は足場が組めない場所にあることが多く、高所など点検できない箇所がある。
パイプラインの保全を手掛ける企業に「全てのガス管を点検したい。いい方法はないか」と相談され2013年に開発。
東日本大震災でガス復旧工事に携わって以来、「保守点検にしっかり取り組み、減災につなげる重要性を強く感じていた」(根本社長)ため、ロボットの開発を引き受けた。
目指したのはガス管を傷付けず、軽くて安価、壊れにくく組み立てやすい構造だ。
思い浮かんだのが車のタイヤ。
すべりにくく段差や坂を上れる。
点検の難所であるカーブも内輪と外輪の空気圧に差をつけることでスムーズに進める。
足場を組んだ場合、準備、検査、解体まで3日かかっていたが、ロボットなら3時間で済み、コストも10分の1に抑えられる。
2014年は県内のガス輸送パイプライン約2キロメートルの点検に使われ、ベンチャー・中小企業のビジネスプランを表彰する「かながわビジネスオーディション2015」の最高賞を受賞した。
建設や原子力発電所関連などから問い合わせも相次ぐ。
「人を乗せても安全な構造に」
「高所のペイントを塗り直す作業に応用できないか」
など要望も様々だ。
世界的にも老朽化するインフラを点検する需要が高まっている。
国によると、関連するロボットの市場規模は世界全体で50億円、2030年には2兆円に増える見通しで、注目度が一層高まりそうだ。
日本経済新聞より