大型リゾート施設のハウステンボス(HTB、長崎県佐世保市)が、敷地内で植物工場の新設を検討している。
野菜は園内のレストランで提供し、輸出も目指す。
農業への本格参入で「観光ビジネス都市」への飛躍を狙う。
沢田秀雄社長は産経新聞の取材に「世界一、生産性の高い植物工場を本格的に作りたい。近く設計に入り、2年ほどかけて建設する」と述べた。
園内では昨年5月、健康をテーマにした「健康と美の王国」を開設した。
この中には地産地消を掲げた「健康レストランAURA(オーラ)」がある。
人工光を用いてミニトマトやパセリ、クレソンなど10種類の野菜を無農薬で栽培する「とれたてファーム」コーナーも設け、来場者に提供している。
HTBの構想によると、植物工場では葉物野菜を中心に栽培する。
コンピューター制御技術を駆使し、スタッフ数を抑えて運営する。
HTBの農業への参入は、日本の食料自給率(カロリーベース)が39%と先進国で最低水準であることが背景にある。
農業の担い手が減る中で、食糧不足の解消に寄与する施設を目指そうと、工場の規模などを具体的に検討している。
植物工場は、産業界でも新たなビジネスとして注目を集めている。
東芝やパナソニックといった電機大手は、かつて家電や半導体を生産していた遊休施設を、植物工場に転用する。
一方で、大規模な設備投資が必要なため、高コスト体質に陥り、既に計画の撤退や破綻するケースも出ている。
このため、HTBにとっては商品での差別化や販路の確保が課題となる。
HTBは将来構想に、最先端の技術を駆使した「観光ビジネス都市」を掲げる。
テーマパークを活性化するのはもちろん、新産業を育て、世界から観光客を呼び込む戦略を描く。
HTBには広大な私有地が広がり、新たな技術の実証実験に取り組みやすい環境にある。
この利点を生かし、植物工場のほか、ロボット開発にも力を入れる。
7月にはロボットをテーマにした新エリア「ロボットの王国」を開業する。
それに先立ち、今春には接客やショーを担うロボットを開発するための新会社を設立する計画だ。
場内でのロボット生産工場の建設も視野に入れ、ロボット技術や、部品の外販を手がける企業に成長させる。
【高瀬真由子】
産経新聞より