桂高(京都市西京区)の生徒と教員が、天然芝生の名勝地で知られる青森県八戸市の種差海岸で、在来種のノシバによる緑化に取り組んでいる。
発芽率を高める同高の技術に着目した環境省の依頼で、今夏をめどに約800平方メートルに植え付ける。
現地のノシバの遺伝的な特徴も研究しており、メンバーは「成果を海岸全体の芝生保全に生かしたい」と意気込んでいる。
片山一平教諭と2、3年生でつくる「地球を守る新技術の開発」研究班。
ノシバの発芽率は自然な状態で10%以下だが、片山教諭らは種子の表皮を薄くしたり、特殊な培地で育てるなどの手法を編み出して99%に高めた。
種差海岸との関わりは一昨年秋。
環境省の自然保護官から、同海岸に開設したインフォメーションセンターを自生種のノシバで緑化したいと相談された。
片山教諭と生徒が現地から種子を持ち帰り育苗。
昨年10月に約2,600個の苗を運び込み、約200平方メートルに植え付けた。
現在は残る約600平方メートルに植える苗を育てている。
一方、メンバーは東北大などと共同で種差海岸のノシバのDNAを調査。
その結果、同様にノシバが自生する宮城県石巻市の金華山と比べ、遺伝子パターンが極端に少なく、病気や環境変化に弱い可能性があることが分かった。
片山教諭は「金華山では、ノシバが鹿に食べられ、消化器官を通ることで種子の発芽率が増し、多様な遺伝子を残せたと考えられる。種差海岸では放牧していた馬がいなくなり、ノシバの多様性が失われたのではないか」と推測する。
メンバーは八戸市などと種差海岸のノシバの遺伝的な多様性を取り戻す方策を検討している。
3年西岡大穂君(18)は「自生種の種子を育てる施設を現地に作るのが一つの案。この先も種差海岸の芝生を保ち続けられるよう、手助けができれば」と話している。
京都新聞より