環境に優しい次世代エネルギーとして期待される水素の研究開発に、電機・重電メーカーが力を入れている。
パナソニックは3日、太陽光を利用して効率よく水素をつくる新技術を公表。
東芝も同日、北海道で水素の製造から利用までの実証実験を行うと発表した。
2020年の東京五輪開催時に「水素社会」を世界にアピールする政府の計画を背景に、各社とも事業化に向けて本腰を入れ始めている。
パナソニックが開発を進めているのは、太陽光で水を電気分解し、水素を生み出す新技術。
同社によると、効率的に水素を取り出せる触媒の開発に成功した。
今後さらに効率を高め、低コストな水素製造を目指すという。
住宅の屋根にパネルのような装置を設置し、燃料電池と組み合わせることなどを想定している。
同社は水素関連の取り組みとして、平成21年度から家庭用燃料電池「エネファーム」を発売。
エネファームは業界全体で平成26年度に累計10万台を突破し、政府は平成32年度に累計140万台の普及を目指している。
同社の宮部義幸専務は「今後も(工場などの大規模発電ではなく)家庭やビルなど分散発電を中心に取り組んでいく」と話す。
東芝は北海道の釧路地区と連携し、水素の製造から貯蔵、運搬、利用までの工程を構築する実証実験を今年度から5年間実施する。
実証実験は、北海道白糠町に小規模な水力発電を建設し、発電した電気を使って水素を製造する。
その水素をトレーラーで運び、酪農家や温水プールなどに設置される燃料電池や、燃料電池自動車の燃料として利用する計画だ。
このほか、川崎重工業も昨年11月に産業用として世界初となる水素液化システムを開発し、播磨工場(兵庫県播磨町)で実証実験を開始した。
水素液化プラントの試験操業を開始し、商用化を目指している。
再生可能エネルギーを使った水素製造は二酸化炭素(CO2)を排出せず、環境負荷が少ない。
世界の水素市場は平成62年に160兆円に達するとの試算もあり、今後、競争が激しくなりそうだ。
【小林健一】
産経新聞より