三大環状道路などを始めとする首都圏の高速道路網が次々と整備されている。
新たに道路網の要衝となった拠点都市には物流不動産による巨大倉庫や食品など各種工場、大規模商業施設が次々に竣工・再配置された。
「昨日まで栄えていた街が、気が付けば、隣の街にとってかわる」(南関東の廃棄物処理業者)という事態が起きている。
3月7日、首都高速道路中央環状線の湾岸線から渋谷線の約9.4キロメートルの区間が開通し、中央環状線約47キロメートルが全線開通した。
これによってまず、湾岸から新都心までを環とするエリアで、国際標準のコンテナ車が一般道を通ることなく走れるようになる。
これは序章に過ぎない。
舛添陽一東京都知事は、「横浜や川崎、千葉、木更津、新宿、羽田がつながりアクセスが向上する。2020年の東京五輪までには外環道(東京外かく環状道路)も開発したい」と意気込む。
外環道のさらに外側には圏央道(首都圏中央連絡自動車道)の工事が着々と進んでいる。
これら三大環状道路と東京を中心に放射状に広がる東名、中央、関越、東北、常磐、東関東などの高速道路がつながり、既存の新幹線や新たなリニア新幹線が絡む。
交通インフラの整備と並行して進んでいるのが、物流不動産による巨大倉庫、食品など各種工場、大規模商業施設の整備、再配置だ。
「米国でファンドによる物流センターを整備する法制度ができ、その後、日本でも倉庫業法などの改正がなされて巨大物流センターが広まった。最大の激戦区が首都圏で、日系、外資系の物流不動産による巨大物流倉庫が幹線道路の拠点ごとにできている。大手小売業やネット通販の拡大などもあるが、ここまで巨大物流センターができた背景には、日本が世界でもトップクラスの高度な内需の国になっているということがあげられる」(鈴木邦成日本大学生産工学部教授)
その成熟都市の象徴が首都圏だ。
従来の典型的な第二次産業で、首都圏に現在も比較的工場があるのは高付加価値品に特化した化学工業、自動車関連産業などだが、ゼロ・エミッションの取り組み、分別徹底による「有価物化」で、かつてのように産業廃棄物やスクラップが一定量まとまって排出される時代ではなくなった。
一方、新しい巨大物流センターを利用する内需産業の典型が通販を含む大手小売業、家電量販店、食品加工業などだろう。
奇しくも、日本の製造業が培った厳しい納品・在庫管理がこれらのオンデマンド物流を支えている。
これらの業種の店舗や工場も整備された道路網と消費の拠点都市に効率的に立地する、あるいは太平洋湾岸と東北・日本海側との結節点に立地するケースが多々ある。
工場では茨城県南部、群馬県南部などがその例だ。
周辺のリサイクル現場に食品加工業からの印刷フィルムロス品などが多く集まっていること、焼却施設や再資源化施設にいわゆる商品廃棄が多く集まっていることは偶然ではない。
物流倉庫のありさまも変わってきた。
新たに大型物流センターを整備した物流企業には、センター内に機密文書の保管と廃棄までを併設しているところもある。
「大口の顧客が巨大物流センターへと流れた結果、既存の物流会社の倉庫に空きが目立つようになった。ところが、これらの倉庫がリユース品やリサイクルのための静脈物流向けに利用されるようになっている」(鈴木教授)
動脈物流の激変が、静脈産業にも否応なく変化を求める時代になりつつある。
循環経済新聞より