長い歴史を持つガラスびんのリサイクル事業が転換期を迎えている。
家庭からの分別排出が進み、ガラスびん向けの再生原料(無色などのカレット)が何度も繰り返し使われるようになったことで、品質の維持が難しくなりつつあるという。
一方、無色や茶色以外の「その他の色」については、グラスウール向けなどの需要が堅調だ。
ガラスびんのリサイクルはどのように変わっていくのか。
(公財)日本容器包装リサイクル協会(東京・港)が2月23日に公表した2015年度の容器包装再商品化に関する落札結果の速報値によると、
ガラスびんについては
「無色」の落札数量は2014年度比で2,069トン増の11万5,399トン(構成比31.2%)、
「茶色」が163トン増の12万6,808トン(同34.2%)
「その他の色」が4,038トン増の12万8,223トン(同34.6%)となった。
再商品化の落札単価(加重平均、消費税抜き)については、
「無色」が2014年度比で1トン当たり69円減の1トン当たり4,487円、
「茶色」が1トン当たり1円増の1トン当たり4,990円、
「その他の色」が1トン当たり568円増の1トン当たり7,138円となった。
ガラスびんについては、指定法人(容リ協)を通じた再商品化は逆有償(再商品化費用を要するリサイクル)がほとんどだが、2015年度分の落札では極ごく一部だが有償(買取によるリサイクル)も見られたという。
指定法人を通じた再商品化の落札数量の構成比をみると、「無色」「茶色」「その他の色」はそれぞれ30%強と同程度だが、市場に出回っているガラスびんのほとんどは「無色」「茶色」が占めている。
指定法人ルートでの「無色」「茶色」の落札数量が一定量にとどまっているのは、これらはもともと市町村とガラスびんメーカーとの間で直接契約による独自の国内リサイクルが多いためだ。
一方、「その他の色」は約7割が指定法人ルートにまわっているという。
2015年度落札結果では、「その他の色」は落札数量、落札単価ともに増加した。
用途としては、「無色」などはガラスびん向けが多いのに比べて、「その他の色」は断熱材(グラスウール)向けなどが多いとされる。
「無色」のものなどはガラスびんメーカー向けのカレットに加工されて再びびんの原料になるが、ガラスびんメーカーが求める水準の品質を維持するのが徐々に難しくなっていると指摘する業界関係者の声もある。
「ガラスびん向けの再生原料としては、消費者が自動販売機で購入する際に機械内で割れないというような強度は最低限必要であることは承知している。ただ、現在の飲料・調味料向けのガラスびんは、接着剤で付けたプラスチックキャップやプラスチックラベル、紙ラベル、アルミキャップなど高品質のガラスカレットにとっては異物となるものが大変多い。異物処理コストも掛かる。非常に難しい課題だ」
紙などの有機物が微量でも混ざると、ガラスびんメーカーで100℃以上の高温で溶融した際に焦げの色がついてしまうこともあるという。
無色びんの場合、このようなわずかな着色も許されない。
されに、数十年前までは許されたような、いわゆる「アワ」(ガラスびんの中の微細な気泡)も現在では許されない。
ガラスびん向けの高品質のカレットを加工するには細心の注意と異物除去のための選別と最新鋭の設備が必要で、「再商品化のためのコストが掛かり、有償には向いにくい」という声もある。
安定した持続的な事業とするために、関係業界が取り組む課題は少なくなさそうだ。
循環経済新聞より