「社会構造そのものを変えるインパクトがある」
世界に先駆けて昨年12月発売されたトヨタ自動車の燃料電池車(FCV)。
その発表会で加藤光久副社長はこう述べ、水素で走るクルマの登場が「新たな産業を育て雇用を創出し、日本の国際競争力を高める」と明言した。
国土が狭く、資源も少ない日本。
そんな資源小国が戦後、驚異的な経済成長を遂げたのは、世界が感嘆する新技術を生み出し、新たなサービスを提供してきたからだろう。
バブル崩壊後、デフレ経済から抜け出せず、世界における日本の存在感は低下したが、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」により日本経済は再起動し、かつての力強さを取り戻しつつある。
FCVをはじめ、リニア新幹線、次世代国産ジェット機「MRJ」、はやぶさ2、再生医療…。
これらはすべて単なる新技術ではない。
産業や社会の構造までも変えてしまう可能性を秘めた“スイッチ”だ。
日本の技術力復活は、技術貿易の数値からも見て取れる。
総務省によると、平成25年度の特許使用料などの「技術輸出」による受取額は2年連続で増加。
輸出から輸入を差し引いた技術貿易収支は2兆8,174億円の黒字と過去最高を更新した。
世界が関心を寄せるのは日本の技術力にとどまらない。
例えば、クールジャパン。
官民ファンド「海外需要開拓支援機構」は、マレーシアなどの日系商業施設をクールジャパンの発信拠点とする投資案件を昨年秋に決定。
アニメなどポップカルチャーのみならず、日本食やファッションなどクールジャパンを世界に売り込むための投資が今年から動き出す。
株高・円安が進み、大手を中心に企業収益はリーマン・ショック前の水準にまで回復した。
ただ、これらは日銀の金融緩和によるところが大きい。
日本発の新技術・新ビジネスを、どこまで世界に広めることができるか。
日本経済を再び成長軌道に乗せるための今年の大きな課題だろう。
【島田耕】
産経新聞より