自然エネルギーによる地域活性化事業を手掛ける千葉エコ・エネルギー(千葉市)は、このほど、千葉市緑区大木戸町で専用架台を採用した大規模ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)設備「千葉市大木戸アグリ・エナジー1号機」が完成したと発表した。
今回の事業開始を契機に同社は農業へ参入し、ソーラーシェアリング設備下での「ニンニク」の栽培に取り組む。
ソーラーシェアリングは農林水産省が2013年から認めている農地で、太陽光発電と農業を両立させる取り組み。
政府の未来投資戦略でもその普及促進が明確に位置づけられるなど、新たな再生可能エネルギーの導入モデルとして注目されている。
再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)を利用することで、太陽光発電事業の収益を農業の支援・継続へと活用することができるため、農地をエネルギー生産地にする次世代農業モデルとしても期待されている。
これまで同社は、自然エネルギーによる地域活性化業務を行う中で、2017年3月には千葉県匝瑳(そうさ)市に完成した「匝瑳メガソーラーシェアリング第一発電所」の事業化に関わり、大規模ソーラーシェアリングにおける事業スキーム構築やファイナンスの経験を得た。
それに伴い、農業者の減少、耕作放棄地の拡大、地域の過疎化、食の安全性など、農業問題の現状を目の当たりにしてきたことで、企業として農業参入を決意したという。
農業の参入にあたっては、農業分野で幅広い業務を手掛け、行政からの受託事業を行うなどの実績もあるマイファーム(京都市)からの農業経営指導を受けている。
また、同発電設備の事業資金は城南信用金庫から融資を受けた。
千葉市大木戸アグリ・エナジー1号機、広さ約1万m2(平方メートル)の耕作地に、トリナ・ソーラー社製のモジュール(TSM-PD05、275W)を2,826枚、SMA社製のインバータ(STP25000TL-JP、25kW)25台などを設置し、全体の定格出力は625kW(キロワット)。
架台は日本BSL社製のアルミ架台を採用した。
施工はビル技研(千葉県野田市)が担当している。
初年度の年間発電量は約92万kWh(キロワット時)を見込む。
設置費用は1億5,000万円。
今回、栽培作物に選んだニンニクは、現在全体の59.4%を輸入に頼っている(農林水産省「農林水産物輸出入統計」より)。
そのため、農産物の国内自給率向上への貢献、市場のニーズがあり、加工も視野に入れたときに高収益化が見込みやすい。
加えて、市場や周辺農家のバランスを崩さない作物、管理の手間が容易であり、機械化による省力化も可能で発電設備の下でも比較的安定した栽培ができる可能性が高いなどの理由から選定した。
今後は、農業人口の減少や高齢者向け健康志向食品のニーズの拡大などを見据えて、農業の高収益化や省力化のための設備投資、農業人材への教育投資、農業スタートアップの支援などを行っていくという。
千葉エコ・エネルギーによると、国内で大きく注目されつつあるソーラーシェアリングが全国で1,000件程度しか普及していない背景に、発電事業と農業の両立を図るためのノウハウを持った事業者が少ないことが挙げられるという。
同事業の開発過程や今後の設備下での自社農業で得られる知見を用い、未稼働案件の事業化サポートだけでなく、既稼働のソーラーシェアリング設備下での営農サポートや、千葉県を中心とした関東圏内での自社農場の展開を進める。
さらに、アグリ・エナジープロジェクトの中で、自然エネルギーを活用した次世代農業に関する基礎研究農場としても同事業を活用し、脱FIT時代に向けた農業における自然エネルギー自家消費モデルの構築を目指す。
スマートジャパンより