鹿児島、沖縄両県の海岸に油の漂着が続いている。
1月に東シナ海で衝突事故を起こし、奄美大島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)で沈没したパナマ船籍の石油タンカーの燃料とみられる。
最初の漂着から28日で1カ月。
これまでに鹿児島県だけで約90トンの油の固まりを回収しているが、漂着が途絶える見通しは立っておらず、環境への影響が懸念されている。
海上保安庁によると、油の固まりは最初、鹿児島県の宝島で見つかり、その後奄美群島やトカラ列島、屋久島、沖縄本島に拡大。27日現在で24島に漂着しており、奄美大島では口に油が付着したアオウミガメ1匹の死骸も確認された。
漂着物の回収は、住民ボランティアや自治体職員が行っており、回収量は鹿児島県だけで既に約90トン。
重機を使うと、油の固まりを踏むなどして回収が難しくなるため、全て手作業で行っている。
ボランティアのため、県は回収マニュアルを作成しており、18日には奄美市だけで住民約1,800人が回収作業を行った。
漂着は減っているが、奄美市の担当者は「浜に入れば靴の裏にべっとり付く」。
環境省が行った目視調査では、奄美大島の5海岸でサンゴなど生態系への影響は確認されてないが、同省は危機感を募らせている。
回収した油の処理も問題化している。
現在はドラム缶やブルーシートに包んで保管しており、県は環境などへの配慮から離島での焼却は見送る方針。
九州本土に運搬して処分する方法を検討している。
また、回収費などは通常、原因となった船主に請求するが、そのためには、漂着した油と船の燃料などの成分が類似していることを証明する必要があり、自治体などは第10管区海上保安本部(鹿児島)の漂着物の分析を注視している。
石油タンカーは1月14日、奄美大島の西方沖約315キロで沈没。
燃料の重油は2千トン強あり、積み荷の軽質油は約13万トンに上った。
沈没海域では現在も重油が浮遊し、10管の巡視船が航行して拡散作業に当たっている。
西日本新聞より