札幌市交通局は2014年12月1日から、従来は間欠的に作動させていた地下鉄の車内暖房を原則として停止しています。
「国からの節電協力要請や電力需 給状況、電気料金の再値上げなどの状況」がその理由です。
車内や駅の照明を間引いたり、エスカレーターの一部停止といった節電対策はよく行われていますが、「暖房停止」は珍しい手段です。
しかし「札幌の冬」と聞いて、寒さを連想しない人はいないでしょう。
よりによって、といったら語弊があるかもしれませんが、そうした土地で暖房をオフにしても大丈夫なのでしょうか。
札幌市交通局によると「そもそも、暖房を入れていない地下鉄のホーム、トンネル内の温度は、外気温より高くなっており、冬はお客様が外気温に合わせた服装をしていることから、『寒い』よりも『暑い』という声の方が多くなっています」とのこと。
確かに気温の低い屋外から列車に乗って、暑いけど混雑でコートが脱げず困ったという状況、珍しくないかもしれません。
ただ車内温度が低くなる早朝などには暖房を入れるほか、状況に応じて柔軟に対応していくので、乗客に過度な我慢を強いることにはならないと札幌市交通局はしています。
この車内暖房の原則停止は2015年3月31日まで、年末年始期間を除いて実施される予定です。
また同じく札幌市交通局が運行する路面電車においても、日中は外気温による影響が大きいため暖房を間欠運転するものの、朝夕のラッシュ時間帯は暖房が停止されます。
暖房が原則として停止された札幌の地下鉄は、実は夏場の冷房も行っていません。
そもそも、すべての車両がクーラーを搭載していなかったりします。
その理由について、2012年4月の『広報さっぽろ中央区版』では「北海道の気候柄、暖房はあるが冷房はない」としています。
特に1970年代から80年代頃、鉄道の車内冷房が普及していき、「冷房化率」の進展についてメディアで「夏の風物詩」のように報じられていました。
しかし近年では、日本民営鉄道協会が「民鉄各社は夏場の快適な輸送サービスのため、車両冷房化を進めており、車両冷房化率はほぼ100%となりました」 としているように、鉄道車両の冷房は存在して当たり前。
「冷房化率」に関する報道を見かけることはほとんどなくなりましたが、札幌の地下鉄は現在も冷房化率0%なのです。
ちなみにクーラーがない札幌の地下鉄ですが、その代わり、とあるエコな冷房装置を使っていたりします。
夏になると車内へ風鈴が取り付けられ、「チリンチリン」と涼しげな音を奏でるのです。
1976(昭和51)年から行われ、札幌の「夏の風物詩」になっています。
【恵 知仁】
乗りものニュースより