生かせ民間の技

 

種子島宇宙センター(鹿児島県)から30日、H2Aロケットで打ち上げられる小惑星探査機「はやぶさ2」。

 

生命誕生の謎に迫る世界も注目する探査機の開発に、町工場など民間のものづくりの力が生きている。

 

 

 

はやぶさ2は、生命の起源となった可能性のある有機物や水が存在する小惑星「1999JU3」に着陸し、物質を採取する。

着陸するには、まず「ターゲットマーカー」と呼ばれるボールを小惑星へ投下。

これを探査機本体からフラッシュランプで照らし、反射光を目印に降下する。

 

初号機でも採用された技術で、このランプを開発しているのが、1917年創業の「ミヤタエレバム」(神奈川県海老名市、従業員40人)だ。

同社は、カメラや医療機器などに使うランプを手作業で製造する。

初号機の開発担当だった高橋勉さん(65)は「宇宙ではどんな現象が起きるか分からず、右往左往しなが らの開発だった」と振り返る。

 

1999年ごろから検討を始め、完成まで約3年かかった。

一般的なカメラのフラッシュのように、キセノンガスを封入したガラス管の両端に高い電圧をかけて発光させるが、漏電を防ぐ効果を狙ってガラス管の両端を刀のつばのような形にした。

職人の技術が引き継がれる同社ならではの繊細な加工だ。

 

初号機では、計画通りターゲットマーカーに光が当たった。

 

一般的には使われない探査機用製品は商売にはならない。

しかし「我々のものづくりのプライドをかけた製品だ」(高橋さん)と引き受けた。

今回も大切に保管してあった初号機の設計図を基にランプを製造。

現在の責任者、西森憲一さん(40)は「初号機で光ったと報告を受けたときの喜びはひとしおだった。今回も朗報を待ちたい」と話す。

 

 

 

今回初めて参加した弾薬メーカーの日本工機(東京都港区、従業員456人)は、「はやぶさ2最大の挑戦」とされる小惑星表面にクレーターを作る衝突装置の開発を担当した。

宇宙機器は初めての経験。

大量の爆薬を扱いながら、装置の密閉性を確保し、軽量化する作業は困難を極めた。

さらに2011年には東日本大震災が起き、福島県内の開発拠点も被害を受けた。

 

それらを乗り越えたのは同社などの技術者の粘りだった。

異なる種類の金属の溶接や、ドロドロした爆薬の注入などの難題もクリアし納期に間に合わせた。

藤垣雄一・品質保証部長(59)は「問題を克服した経験は会社にとって無形の財産になる。

打ち上げにこぎつけることができ、震災時の多くの苦労を思い出すと感無量だ」と話す。

 

はやぶさ2の科学観測分野のとりまとめを担う渡辺誠一郎・名古屋大教授(50)は「探査機には研究者だけではなく、メーカーの皆さんの力が結集されている。それを100%活用するのが我々の仕事であり責任」と表情を引き締める。

【大場あい、永山悦子】

 

 

 

毎日新聞より

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

株式会社トリムはガラスをリサイクルする特許技術でガラスから人工軽石スーパーソルを製造しています。
世の中のリサイクルやエコに関する最新情報をお届けして参ります。

目次
閉じる