茶殻から系商品原料

 

化学品製造のカーリットホールディングス(HD)は、緑茶を充填するボトリング事業で出る茶殻から化粧品原料を開発した。

 

2018年度中に量産工場を稼働する。

 

これまで大量に出る茶殻は産業廃棄物として処理費用を払っていた。

化学メーカーの蓄積を生かして有効活用に乗り出す。;

 

 

 

子会社のジェーシーボトリング(東京・中央)は飲料大手からの受託で緑茶やコーヒーなどの清涼飲料水をペットボトルや缶に充填している。

ラインを増設した2011年からは、緑茶飲料大手からの受託生産量が急増し、茶殻が大量に出るようになった。

 

「年間約1,000トン出る茶殻の処理費に数千万単位かかる」。

R&Dセンター開発企画室の相沢恭室長はこう述べる。

 

水分を含んだ茶殻は酸化による劣化が早く、再利用の使い道に悩んでいた。

家畜の飼料や肥料として再利用できるのは微量で、大半を産業廃棄物として、業者に処理を委託していた。

 

2014年に同センターの研究員が茶殻を自社技術を生かして有効活用できないかと考え、化学的に分析し始めたのがきっかけだった。

 

研究開発を進めたところ、意外にも有効成分が豊富に残っていることが分かった。

それまでは「茶殻にはもう中身が残っていないと思い込んでいた」(相沢室長)ため、茶殻の成分を十分に分析していなかったという。

 

抽出コストの採算性を確保するため、茶殻から複数の成分を抽出する技術は、化学メーカーの知識と経験によるものだ。

 

化粧品原料となる抽出成分はクロロフィル(葉緑素)と緑茶ポリフェノールだ。

消臭効果のあるクロロフィルはデオドラント商品への利用を想定する。

緑茶ポリフェノールは抗酸化力や抗菌効果があるカテキンを多く含む。

強い紫外線を浴びるとシミやソバカスの原因となるメラニン色素の過剰な生成を抑えるほか、紅班やニキビにも効果があるため、スキンケア商品向けの採用を見込む。

 

化粧品原料には安心と安全が求められる。

「日々飲んでいる緑茶ならば化粧品にしてもイメージは良い」(相沢室長)

 

すでに複数のメーカーから引き合いがあるといい、2017年度中にパイロットプラントを、緑茶をボトリングする渋川工場(群馬県渋川市)の近くに立ち上げ、試験販売に着手する。

2018年度に、25億円の設備投資枠の中で製品化に向けた量産工場を稼働させる計画だ。

成分を付与したフィルムなど、高付加価値製品の開発も進める。

 

ただ化粧品原料を抽出した後にも茶殻は残る。

このままだとやはり産業廃棄物となるが、主成分のリグニンや繊維のセルロースが残っておあり、活用法をまだ探っている段階だ。

 

このほかボトリング工場では、ウーロン茶や紅茶といった他の茶殻や、缶コーヒーを生産した後のコーヒー殻もある。

相沢さんは「うまく活用法を見出して、最終的には廃棄量ゼロを目指したい」と今後の研究開発の進展に期待を込める。

【小柳優太】

 

 

 

日経産業新聞より

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