静岡県裾野市が、民間事業者と連携し首都圏のビルなどに屋上緑化用苗木を供給する事業を本格的にスタートさせた。
4月中旬に生産者による「裾野市環境緑花事業協同組合」が発足し、市が整備した実証園地も稼働した。
少量の用土で樹木を育てる薄層軽量化技術を検証し、休耕地再生につなげる「裾野オリジナル」の事業確立を目指す。
組合のメンバーは同市の認定農業者6人。
市が希望者を募り、苗木、茶、稲作など多彩な分野のエキスパートがそろった。
園芸作物を手掛ける手綱史芳理事長(52)は「40代以下が3人。それぞれに得意な領域があるので新しい発想が生まれやすい」と期待する。
事業は、市内にある186ヘクタール(昨年2月現在)の耕作放棄地の有効活用につなげる狙いもある。
同市須山の実証園地は標高485メートルの地点で敷地面積約3千平方メートル。
3メートル四方のコンクリート製の植栽スペースを20カ所用意し、敷地内に気温・風速計、実験用の土作りに用いる用土混合機を備えた。
南向きの高台で、冬場を中心に風が強く吹き付ける。市農林振興課の杉山和利課長は「生育環境が厳しいところなら、条件を選ばない苗木を作れる」と意図を説明する。
ポイントは屋上緑化を導入した建物への負荷軽減。
用土の量をどれだけ減らせるかが問われる。
実証園地では厚さ約10センチの用土で高さ2メートルの樹木を育てられるようにするのが目標という。
現在はナンテン、ヒメシャラ、ウバメガシなど約10種を植える。
配合を変えたさまざまな用土と品種の組み合わせを試し、保湿と排水の状況、根の張り方を調べる。
市は、東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年を見据え、2018年3月までに苗木と用土を組み合わせた製品の完成を目指す。
手綱理事長は、「都市の高層空間に安らぎの場所を提供したい」と将来像を語った。
静岡新聞より