関西電力と丸紅が茨城県神栖(かみす)市に、火力発電所建設を計画していることが12日、分かった。
電力小売りの自由化で、新たな収益源になると見込む首都圏での事業展開を強化する。
出力11万2千キロワットで、平成30年の運転開始を目指す。
間伐材などの木くずと石炭を混ぜて燃料とする発電所で、一般的な石炭火力よりも二酸化炭素排出量が少ないのが特長だ。
丸紅は当初、大阪ガスと組んで同じ場所で石炭火力の建設を検討していたが、条件面で折り合えなかった。
その後、首都圏周辺で発電所用地を探していた関電と組むことになった。
関電子会社の関電エネルギーソリューション(ケネス、大阪市)と丸紅が出資する特定目的会社「かみすパワー」(東京)が建設する。
茨城県から奥野谷浜工業団地の用地5.7ヘクタールを14億8千万円で取得した。
ケネスは平成26年4月から、首都圏で企業向け電力販売を展開。
同社は石油元売り大手の東燃ゼネラルと共同で千葉県内に石炭火力の建設を計画している。
ただ、出力100万キロワットと大規模なため環境影響評価の手続きや建設に時間がかかり、運転開始は8年後の平成36年になる予定だ。
茨城県で計画する火力発電は規模も小さく、建設も比較的短期間で即戦力となる。
燃料には、間伐材や建築廃材などの木くずを固めた「木質ペレット」を使うことで石炭の使用量を削減する。
木は生育するときにCO2を吸収するので、燃やしても排出は差し引きゼロとみなされる。
関電は、このほか千葉県市原市にある天然ガス火力(出力11万キロワット)を購入するなど、首都圏向けの販売で、自社電源の確保に力を入れている。
関西電力と丸紅が新設を計画する火力発電所で、石炭と木質ペレットの混焼を採用したのは、電力自由化で求められる低価格を実現しつつ、CO2排出量の抑制という地球温暖化対策の要求に応えるためだ。
電力市場が本格的な競争時代に入り、関電や新規参入組の「新電力」は各地で石炭火力の建設に乗り出している。
関電幹部は「石炭火力でなければ価格競争力は望めない」と話す。
だが、石炭火力の発電量当たりのCO2排出量は、天然ガス火力の約2倍に及ぶ。
増設は、温室効果ガス排出量を平成42年度までに平成25年度比で26%削減するとの政府目標に逆行し、国際的な批判も大きい。
環境省は昨年6月、大阪ガスや電源開発(Jパワー)などが山口県宇部市に計画する石炭火力の環境影響評価(アセスメント)で、「是認しがたい」とする意見書を出した。
それ以降、4件の新設計画に反対意見を表明。石炭火力が乱立しかねない状況に「待った」をかけた。
しかし原子力発電所の再稼働が進まない上、導入が進む太陽光発電などのコストは依然高い。
自由化による電気料金の値下げを促すには石炭火力が有効だ。
環境省は結局、電力業界が販売電力量1キロワット時当たりの排出量を平成42年度に平成25年度比35%削減するとの目標を掲げたことなどを評価し、今年2月に5件とも容認した。
関電と丸紅が茨城県に計画する設備はアセス対象外の規模だが、業界の目標達成には環境対策が不可欠と判断した。
【藤谷茂樹】
産経新聞より