岩手県一戸町は来年から、ウナギの陸上養殖に乗り出す。
同町岩舘の一戸インター工業団地で来年3月から稼働する木質バイオマス発電施設の冷却用温排水を活用し、年間で最大10万匹の出荷を見込む。
現在、運営主体や建設地の選定を進めており、事業着手は早くて夏ごろになる見込み。
産地としては国内最北端となるため、中山間地域発の“北限のウナギ”として注目を集めそうだ。
発電施設では、年間約9万トン(1日当たり約270トン)の木材チップを燃やして蒸気を発生させ、タービンを回して発電する。
その際、設備を冷却するため1日約600トンの水が使われるため、町としては資源の再利用を目的に、新規産業の導入を検討してきた。
ウナギの稚魚は近年、不漁が続き、価格が高騰。
養殖も従来は農林水産省に届け出を申請すれば始めることができたが、今年4月からは稚魚の保護などを目的に、許可制となったため、新規産業としては許可を得ることが難しい状況となっている。
町では、山口県でウナギの陸上養殖を手掛ける「ジャパンマリンポニックス」に協力を依頼し、同社の事業を分けてもらう形で計画を進める意向だ。
温排水を活用することで、さまざまなメリットがある。
ウナギの養殖に適しているとされる水温30度を容易に確保でき、消費電力の削減も可能。
温水を使用することで成長も早く、出荷までの期間を短縮できるため、飼料代や人件費の抑制も見込め、低価格での販売につなげられるという。
将来的に、町内で消費してもらうための店舗運営も視野に入れるほか、青森、岩手、秋田の北東北3県へ向けて出荷する考え。
町担当者は「町の活性化へ向けた新たな起爆剤になるよう準備を進めたい」と話している。
デーリー東北より