2011年03月02日
本当の母親
1840(天保11)年のこの日に
遠山の金さんこと遠山左衛門尉景元
が北町奉行に任命された日を記念し
て今日は【遠山さんの日】だそうで
す。
遠山の金さんの場合、今でいう潜入
捜査を行い、最後に【桜吹雪】が証
人となって悪事を裁くと言うパター
ンでした。金さんは金さんで良さが
あり【名奉行】だとは思いますが、
この方の【名奉行】ぶりには、感心
させられる事が多いのではないでし
ょうか?
その人物とは【本名 大岡忠相(おお
おかただすけ)一般的には大岡越前
1677~1751に活躍した名奉行です。
今日は『タイトル』にある【本当の
母親】と言うエピソードをご紹介し
たいと思います。
『昔江戸の下町に、おしずと、たい
ちという親子がすんでいました。
たいちは、十才男の子です。
当然ですが、(おしず)は、(たい
ち)をとてもかわいがり育てていま
した。
ある日の事、突然(おこま)とい
う女性がやって来て『おしずさん、
たいちは私の息子。昔、あなたに預
けた私の息子です。返して下さい』
と…。
(おしず)は驚いて言います。
『何を言うのです。あなたから預か
った子は、もう十年も前に亡くなっ
たではありませんか。
この事は、(おこま)さんだって知
っているでしょう』
『いいえ、うそをいっても駄目です。
お前さんは自分の子が死んだのに、
わたしの子が死んだと言ってごまか
して、わたしの息子を取り上げてし
まったんじゃありませんか。
私は騙されませんよ。さあ、直ぐに
返しなさい!』
(おこま)は、そう言いはるのです。
(おしず)が、いくら違うといって
も聞きいてくれません。。。
毎日、毎日、そんなやり取りが続き
ました。
(おしず)は困りはてて、町奉行の
大岡越前守(おおおかえちぜんのかみ)
に相談しました。
大岡は話を聞いた後に、(おこま)、
(おしず)、たいちの三人を呼び寄
せます。
【これ、(おこま)お前は、そこに
いるたいちを自分の息子だと言って
いるそうだが、何か証拠はあるのか?】
『はい。実はこの子が生まれた時、
私はお乳が出なかったので(おしず)
さんに預けたのです。この事は、近
所の人がみんな知っています。誰でも
お聞きになって下さい』
(おこま)は、自信たっぷりに答えま
した。。。
【では、(おしず)に尋ねる。お前は
(おこま)の子どもを預かった覚えが
あるのか?】
『はい。ございます』
『この子が生まれた時、わたしはお乳
がたくさん出ました。それで、(おこ
ま)さんの子供の(ひこいち)を預か
ったのです。でも、その子はまもなく
病気で死んでしまいましたので、すぐ
におこまさんに知らせたのでございま
す』
(おこま)が言いました!『この嘘つ
き! お奉行様!(おしず)は大嘘つ
きです!!死んだのは(おしず)の子
です。私の子供をかえしてください!』
『いいえ、死んだのは、確かにに(ひ
こいちだったんです。間違いありませ
ん。と(おしず)も反論しました。
二人は奉行の前で言い争いをしました。
その様子を見ていた大岡越前守は
【二人とも、しずまれっ】と、大声で
叱りました。
(おこま)(おしず)その子がお前達
の子供である、確かな証拠はないか?
例えば、ホクロがあるとか、傷跡があ
るとか?目印になる様なものがあった
ら言うがいい】
(おこま)も(おしず)も、悔しそう
に首を横に振りました
【そうか】
【では、わしが決めてやろう。(おし
ず)は(たいち)の右手を握れ。
(おこま)は(たいち)の左手を握る
のじゃ。そして引っぱりっこをして、
勝った方を、本当の母親に決めよう。
よいな】
二人はうなずきます…。
【よし、引っぱれ!】と言う越前守
の合図で、二人は(たいち)の手を
力いっぱい引っぱりました。
当然大人の力で両方からグイグイ引
っぱられた(たいち)は『痛い!!
痛い!』と言いながら、悲鳴をあげ
て泣き出しました。
その時、ハッと手を離したのは(お
しず)でした。
(おこま)はグイッと、(たいち)
をひきよせて、『勝った!勝った!』
と勝ち名乗りをあげ、大喜びです。
それを見て、(おしず)はワーッと、
泣き崩れました。
それまで、黙って様子を見ていた越前
守は、【おしず。お前は負けるとわか
っていて、なぜ、手を離したのじゃ?】
と尋ねます。
『はい』と(おしず)は、泣きながら
答えました。
(たいち)が、あんなに痛がって泣い
ているのを見ては、かわいそうで、手
を離すしかありませんでした。
お奉行さま。どうぞ、(おこま)さん
に、(たいち)をいつまでもかわいが
って、幸せにしてやるように、仰って
下さいませ』
【うむ、そうか】
越前守は、優しい目でうなずいてから
静かに話を切り出しました。
【おこま、今の(おしず)の言葉を聞
いたか?】
『はいはい、聞きました。もちろん、
この子は私の子なのですから、(おし
ず)さんに言われるまでもありません。
うんとかわいがります。それにわたし
は、人の息子をとりあげて、自分の子
だなんていう、大うそつきとは違いま
すから…と話を続けようとしたその時
【だまれ! おこま!】
越前守は、突然きびしい声で言いまし
た。
【お前には、痛がって泣いている、
(たいち)の声が聞こえなかったのか!
ただ勝てばいいと思って、子どもの事
などかまわずに手を引っぱったお前が
本当の親であるはずがない!
かわいそうで手を離した(おしず)
こそ(たいち)の本当の母親じゃ。
どうだ、おこま!】
越前守の言葉に、(おこま)はまっ青
になって、ガックリと手をつきました。
『申し訳ございません!』
おこまは、自分が(たいち)を横取り
しようとした事をを白状しました。
『お母さん!』『たいち!』
(たいち)は、(おしず)の胸に飛び
込みました。
『お奉行さま、ありがとうございます。
本当に、ありがとうございます』と
お礼を言いました
【これにて、一件落着!】
さすが大岡越前!!
【今日は何の日のホームページを
参考にしております。】