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2014年05月27日

「コスメバレーで唐津は輝く」

アジア市場向け化粧品の製造・輸出拠点を佐賀県唐津市と玄海町に作る「唐津コスメティック構想」が加速している。

地元自治体などが昨年11月に設立した「ジャパン・コスメティックセンター」(JCC)には、当初の想定を大幅に上回る64社が参加する。

地方では例のない新たな産業作り。


唐津市の坂井俊之市長(52)は「かつて交易で栄えた唐津が、コスメバレー実現によって再び輝きを取り戻す」と語った。

                   ◇
唐津コスメティック構想は一昨年の1月、本場フランスのコスメティックバレー協会の名誉会長、アルバン・ミュラー氏が唐津を訪れたことがきっかけです。

コスメティックバレーは、シャルトル市を中心とした仏中部にある世界最大の化粧品産業の集積地です。
ロレアルやシャネル、ルイ・ヴィトンなど世界的に名の知れた企業をはじめ、300社以上が産業クラスター(関連企業・団体のネットワーク)を形成し、半径150キロ圏内に工場や研究施設が集まっています。

コスメティックバレーを大きくしたのが第2代会長のミュラー氏です。
彼は「次は成長著しいアジアが重要な市場になる」と考えたようです。

しかし、仏から船便でアジアに輸出すると、膨大な時間と船賃がかかってしまう。
効率を考えると、アジアに製造・流通基地が必要となる。
そこでミュラー氏は技術力が高い日本、中でもアジアに近い九州に着目したようです。

九州を視察に訪れた際、唐津にも立ち寄り、「この街はシャルトルによく似ている」と気に入っていただけました。

あちらは大聖堂の門前町で、こちらも唐津城の城下町です。
都市としての規模も似ている。
それに、シャルトル同様、周辺に農地が広がり、化粧品の原料栽培に適した環境です。
隣の玄海町には、町と九州大が共同設立した「薬用植物栽培研究所」もあります。

また、高品質の化粧品を出荷するコスメティックバレーには、化粧品検査会社が欠かせません。
唐津には化粧品の検査・成分分析の高い技術力を持つ企業「ブルーム」がすでにあるというのも好条件でした。
ミュラー氏は「唐津はアジアの基地にふさわしい」と感じたそうです。

私たちにとってもビッグチャンスです。
慌ただしく産官学の推進組織の設立準備を始め、昨年11月11日、「ジャパン・コスメティックセンター」を設立したのです。
会長にはミュラー氏に就任いただきました。


当初4社に過ぎなかったJCCの会員企業数は、現在64社に増えました。
今年度末の会員数を65と見込んでいたのですが、5月中にクリアできそうな勢いです。
それも地元だけでなく全国各地の企業が参加しています。

会員企業はさまざまです。
例えば養鶏場。
卵の内側の薄い膜が美白効果があるそうです。
化粧品のビンや箱を作る会社もある。
原材料の栽培から流通まで…。
化粧品は思った以上に裾野が広いのですよ。

JCC発足から半年。
着実に前進しているのは間違いありません。

日本貿易振興機構(ジェトロ)は今年4月、佐賀県内初となる拠点「佐賀貿易情報センター」を佐賀市内に新設。
日仏企業のマッチングを支援する「地域間交流支援事業」の事前調査案件に、唐津コスメ構想を採択してくれました。

また5月13日、仏大使館を訪ね、クリスチャン・マセ大使と会いました。
地元選出の保利耕輔先生(衆院佐賀3区)が衆議院日仏友好議員連盟の会長を務めておられ、仲介してくださったんです。
マセ大使は情報提供などの協力を約束していただき、先日、さっそく大使館の担当者が資料を送ってくれました。

多くの方々が構想に乗ってくれています。
今後も、どんどん盛り上げていきますよ。


コスメティックバレーが実現したら、唐津は変わりますよ。

例えば、基幹産業である農林水産業の活性化が期待できます。
今の化粧品業界は化学物質ではなく天然由来原料を使うのが潮流です。
仏シャルトル周辺では多くの農家が化粧品メーカーと契約し、原料となるハーブや柑橘類などを栽培しています。

ミュラー氏に聞いたのですが、かつてシャルトル周辺でも農家の後継者不足や嫁不足が深刻だった。
しかし、コスメバレーが発展するにつれ、パリに出た若い女性が戻ってくるようになった。
「エルメスの原料は、この場所で、私が作っているのよ」ということが誇りになるそうです。

唐津は古来、海外との交易の拠点として発展してきた街です。
コスメバレーが実現すれば、化粧品の製造・流通基地、天然由来原料の供給基地になります。
現代の交易都市として生まれ変わることができる。

そのためにも、まずは実際にこの場所から取引を生み出さなければなりません。
JCCの会員同士、あるいは仏コスメバレーとJCC会員企業に取引関係が構築されれば、今は様子見をしているシャネル、イヴ・サンローラン、資生堂といったビッグネームも「JCCに入っておいたほうがいいぞ」となるのではないでしょうか。


もう一つ、九州電力玄海原発(玄海町)の再稼働も、唐津市の重要課題です。

私は、原子力規制委員会の厳格な安全基準に適合し、地元同意も得られた原発は動かすべきだと思っています。
現状では経済活動を十分にまかなうエネルギーが足りないわけですからね。

地元経済を見ても悪影響は大きい。
玄海原発が停止したことで九電社員や関連企業の駐在社員の数が大幅に減り、特に飲食店や旅館・ホテルにお金が落ちなくなりました。

もちろん、原発だけでなく再生エネルギーを含めた新しいエネルギーを常に生み出していかなければならないとも思っています。
再稼働しても「これで一安心」ではなく、九電にも次世代のエネルギーを研究し、どんどん打ち出してほしい。
再稼働は当然必要ですが、いつまでも原発に頼っていてよいとも思いません。
                   ◇
【田中一世】

産経新聞より

投稿者 trim : 2014年05月27日 10:55