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2014年05月25日
クレンジングいらずの化粧下地
資生堂が2012年12月に売り出した化粧下地の「フルメークウォッシャブルベース」(FWB)は発売から1年余りで、セルフ化粧下地市場で売り上げシェア1位を獲得したヒット商品だ。
この下地を塗っておくと、メークを湯だけで落とせるという手軽さや時短効果が受けているからだ。
ただ手軽さだけでなく、1回の化粧における水の消費量を減らすというエコの側面を持った商品でもある。
それもそのはずで、同社の社内コンペティション「エコプロダクツコンテスト」の第1回大会で生まれた商品なのだ。
同社は2009年、それまでCSR部などで対応していた環境の専任部署を設置。
同年には環境省が認定する「エコ・ファースト企業」に化粧品会社として初めて認定された。
また、全社員をメンバーとする「アースケアプロジェクト」も発足させ、環境活動に精力的に取り組んでいる。
一連の活動の一環としてエコプロダクツコンテストが2010年にスタートした。
環境部門を担当する環境企画室の尾上真由美課長は「化粧品のレフィル(詰め替え)や植物由来樹脂の採用などパッケージにおいて環境対応を行ってきたが、『もっと斬新なアイデアの商品を』という狙いで始まった」という。
すでに4回のコンテストが行われたが、2010年開催の第1回コンテストに出てきたのが、まさにFWBだった。
60件以上のアイデアの中から選ばれた。
下地を塗り、ファンデーションを施した上にアイメークや口紅などをする。
これを落とすには、クレンジング剤でメーク落としをしてから、さらに洗顔料で洗顔―。
通常の化粧行為における流れだが、ファンデーションの代わりにFWBを使うと、メーク落としの際にクレンジング剤が不要になる。
その秘密は、FWBが肌の表面に作る極めて薄い膜にある。
「ヴェールアクションポリマー」と呼ばれるこの膜は、その上に塗布したファンデーションやメークと一緒に湯ではがれ落ちるため、クレンジング剤を使わなくて済む。
ポイントは40度以上の湯を使うことだ。
言い換えると、汗や体温ではがれ落ちることはない。
その仕組みはこうだ。
FWBは、湯だけに反応するセンサー分子とポリマーを独立した状態で配合。
揮発成分が揮散すると球状のポリマー粒子が徐々に集まって柔らかなメッシュ構造を形成、極めて薄い膜となった状態で肌に残る。
ポリマーとセンサー分子は独立しており、顔に塗ったときもベタベタしない。
一方、湯だけに反応するセンサー分子が塗った後も残っており、洗い流すときに役立つ。
同社が着目したのはクレンジング剤が不要ということ。
それだけ水の消費量が減るからだ。
商品の原料調達から生産、廃棄までの全過程における水の消費量を表す「ウオーターフットプリント」の手法を用いると、1回の化粧行為あたり通常なら11.6リットル消費される水が10リットルに削減される。
尾上課長は 「化粧品は水で洗い流す商品が多い。世界的に水問題に対する注目度が高まる中、環境負荷を極力減らしていきたい」と強調。
水の使用量を削減できるFWBの意義を説明する。
最近のコンテストには100件以上のアイデアが出されるという。
FWBに次ぐ商品化はまだ実現してないが、尾上課長は「今後もぜひつなげていきたい」と環境対応商品の“二の矢、三の矢”を期待する。
【兼松康】
産経新聞より
投稿者 trim : 2014年05月25日 19:54