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2014年02月25日
「顧客第一」地場証券が復活
苦境に陥っていた中小の地場証券が復活している。
リーマン・ショック後の株式市場低迷期を乗り切り、アベノミクス相場で個人投資家が戻ってきたからだ。
強みとする対面販売で顧客との信頼関係を築いてきたことが大きい。
ただ、今の活況相場に浮かれているわけにはいかない。
顧客の高齢化が進んでいるからで、新規顧客の開拓や収益源の多様化が喫緊の課題だ。
「アベノミクス効果で昔からのお客さまが戻ってきた。2013年3月期は6年ぶりに黒字化、今期も前期比2倍の営業増益を見込んでいる」
証券会社が軒を連ねる東京・日本橋兜町に本店を構える明和証券の4代目、小林正浩社長は活況相場に目を細める。
株式売買手数料が収益の80%程度を占めるだけに、個人投資家の復活が好業績をもたらした。
「市況が悪いときも連絡を取り、注文がなくても会いに行って関係を維持してきた」(小林社長)対面営業の面目躍如といえる。
同社資産コンサルティング部1部の木下功喜課長代理は「リーマン後の下げ相場のとき、株が塩漬け状態の『動いていない』お客さまと会ってきた。このお客さまが動いてくれた」という。
木下課長代理は主に東京都荒川区を担当。
「中小企業のオーナーや30~40年の投資歴を持つ元気なおばあちゃんなどのシニア」が顧客だ。
時間を見つけてはこまめに電話を入れ、保有株の値動きや推奨銘柄などの情報を伝えた。
投資に興味がありそうだったら自宅に出向く。
こうした提案営業を地道に取り組んできた結果が好業績に結びついたのだ。
地場証券への逆風が強まったのは、1999年の手数料自由化以降、格安の手数料を武器にするネット証券が次々と誕生し、個人投資家の多くがネットへ移ったからだ。
そのため、廃業や対面営業部門の売却など撤退の動きが相次いだが、明和証券のように得意客との関係を強めることで危機を乗り切った地場証券もある。
その理由について、立花証券の平野憲一顧問は「われわれの強みは個別株のいろいろな情報を投資家に提供できること。『この株はどうか』と問われたとき、適切に答えられる態勢を整備しているから支持される」と言い切る。
今年4月に創業78周年を迎える三木証券。
地場証券の盛衰をみてきた鈴木玄雄社長は生き残りの秘訣を「好業績時の不況への備え」と指摘する。
同社が重視しているのは、オーナーの強みをいかした10年単位の経営だ。
鈴木社長は「目先に走ると手数料を追いかけてしまうので投資家に『(株式を)売ってくれ、買ってくれ』と無理させる。営業職員には『だめなときは勧めるな。信頼関係をつくれ』と言っている」と顧客第一を訴える。
営業職員の評価も顧 客満足度で決める。
回転売買で手数料が増えて会社に貢献しても、「顧客が不満足では評価しない」(鈴木社長)と明快だ。
とはいえ、海外投資家が牽引(けんいん)するアベノミクス相場の反動はいずれ訪れる。
高齢化する顧客層の若返りは進まず、「高値で株式を売って、(取引を)やめる人も少なくない」(兜町関係者)との危機感は強い。
地場証券の多くは、株式売買手数料収入に依存しており、収益構造の改善は必至だ。
小林社長は「お客さまの資産形成に適した商品を作って提案していく」と述べ、金融商品を多様化して、対面営業を深化することに活路を見いだす。
【松岡健夫、佐藤裕介】
SankeiBizより
投稿者 trim : 2014年02月25日 11:58