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2014年02月26日

再生医療、異業種の参入

細胞や組織を再生させる再生医療分野への異業種の参入が相次いでいる。

培養に関連する素材・機器から運搬まで、幅広いビジネスの可能性に着目。

ベンチャーだけでなく、味の素や富士フイルムなど大手も自社の持つ先端技術を武器に参入を目指す。


近い将来に世界で年間10兆円を超えるとされる市場の争奪戦が早くも始まった。

「この培地で再生医療に貢献していく」。
味の素の國本裕副社長は13日、都内での会見で胸を張った。
味の素が2年かけて開発したのは、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を培養する環境(培地)「ステムフィットAK03」。
うま味調味料「味の素」にも使われているアミノ酸開発の技術力を生かした。

病原体による汚染リスクがない人工のタンパク質も開発。
毎日必要だった培養液の交換が1日おきで済み、培養速度も一般的な培地より30倍速いという。
同社と培地を共同開発した京都大学iPS細胞研究所の中川誠人講師は「臨床応用が加速化する」と期待を寄せる。
網膜の再生医療を目指すベンチャーのヘリオス(東京都中央区)に提供。
2016年に本格販売を始め、発売10年後には売上高400億円を見込む。

富士フイルムは、写真フィルムで培ったタンパク質の一種コラーゲンの技術力を応用する。
写真のデジタル化を受け、コラーゲンの他分野への活用を進めてきた同社は、高級化粧品分野などですでに目覚ましい成長を遂げている。
「コラーゲンなどタンパク質が体内の細胞どうしをつないでいる」(富士フイルムの戸田 雄三取締役執行役員)ことから、再生医療分野にも生かせると判断した。

培地に使用する人工タンパク質「リコンビナントペプチド(RCP)」を開発。昨秋には専門の研究開発組織を立ち上げた。
患者自身の細胞を培養する人工軟骨や人工表皮の事業化に向け、中国やタイでの調査にも乗り出した。
戸田氏は「日本発世界初、世界で一番乗りを目指したい」と意欲を見せる。

再生医療の産業化に向けては、広域の運送も重要な鍵を握る。
バイク便大手のセルートは臨床試験の検体や血液、培養した細胞を輸送するサービスを展開。
需要拡大を見込み、7つの本・支社に加え、提携する約60地域のバイク便会社と全国規模の配送網を構築した。

細胞はわずかな温度変化でも品質を大きく損なう。
温度上昇があった場合は、衛星利用測位システム(GPS)によるバイクの位置情報と配送ボックスの温度計の記録から原因を特定する。
園井悦子専務は「生命を左右するものを扱うので、輸送品質には気を使っている」と話す。

経済産業省は、2030年の国内の再生医療(機器や消耗品含む)の市場規模を2012年比の60倍にあたる1兆5,500億円、世界規模では50倍の17兆2,000億円とはじき出す。
同省の江崎禎英・生物化学産業課長は「培地や試薬、培養機器の品質は、日本製の方が優れている場合が多い」と指摘。
再生医療の 産業化を目指す業界団体「再生医療イノベーションフォーラム」は2011年発足時の17社が、現在77社に増え参入機会をうかがっている。

ただ、やはり将来の再生医療の普及を目指し、2000年前後に相次ぎ設立されたバイオベンチャーが成功した例は少ない。
味の素の國本副社長は「1企業だけでできることは限られる。継続するには連携が欠かせない」とし、業種や業態の枠を超えた連携による英知結集の必要性を訴える。
【松村信仁】

SankeiBizより

投稿者 trim : 2014年02月26日 11:52