« 金武に「バイオ油田」 | メイン | セシウムを効率的に分離 »

2013年12月12日

「震災遺構」保存

東日本大震災の被災地は11日、地震発生から2年9カ月を迎えた。

産経新聞社は「震災遺構」候補があるとみられる岩手・宮城・福島3県の17市町に保存に関するアンケートを実施し、14市町から回答を得た。

11月に国の一部支援が決まったことについて、「保存への動きが進む」と答えたのは5市町にとどまり、「1年前に示されていれば事態が変わっていた可能性がある」(宮城県気仙沼市)との厳しい意見もあった。


国の支援内容は、震災遺構の整備や移設にかかる初期費用のみ。
復興交付金から支出される。
保存か否かの判断に時間がかかる場合の応急修理費や、結果的に保存しないことが決まった場合の解体費も支給されるが、維持管理費は出ない。
11月29日には、岩手県宮古市の「たろう観光ホテル」の保存のため、同市に約2億1千万円の交付金を配分することが決定。
しかし、同市は、維持管理費を寄付などで賄うとしているため、重要な遺構が残ったとしても、風化との戦いは続くことになる。

今回のアンケートでは「進む」とした市町の中では「可能性がないよりは可能性がある議論のほうが進む」(気仙沼市)、「大きな前進」(仙台市)、「検討の可能性が広がった」(宮城県山元町)などの意見が続いた。
しかし、各市町村1カ所、初期費用のみという支援内容に、「各地の事情を考慮して2カ所以上を」(岩手県大槌町)との声も上がった。

ただ、今月4日の震災後千日を前にした時点での支援決定に対しては異論が多い。
これまで、気仙沼市の「第18共徳丸」が持ち主の意向で解体されたほか、震災遺構の象徴的存在である宮城県南三陸町の「防災対策庁舎」は、町を二分した議論の末、解体が決定。
多くが「自治体任せではなく、国の課題として取り組んでほしかった」としている。

気仙沼市は「当市の状況から考えれば、1年前に取り扱いが公表されれば何らかの事態が変わっていた可能性がある」と回答。
多くの人が訪れた共徳丸に対する思いをにじませた。

また、宮城県石巻市は「環境省の解体補助期限を考慮し、もう少し早い時期に決めていただきたかった」と回答。
多くの遺構候補を抱えながら、高台移転など復興を進める最大被災地ならではの事情をうかがわせる。

一方で、「風化が始まっており、時宜を得た措置」(大槌町)と評価する立場もみられた。

各市町村1カ所という画一的な手法に対しても多くの懸念がある。
地元中学生から要望を受けるなど、3カ所の遺構保存について検討を続けていた宮城県女川町は11月26日、「旧女川交番」を除き、2つの遺構の解体方針を明らかにした。

さらに、石巻市が立ち上げた保存に向けた検討委員会では8カ所を候補に挙げており、同市は今後の絞り込みにハードルを感じている。
また、「県単位で選択する制度設定もあったのではないか」(宮城県名取市)「遺構を単体ではなく震災復興祈念公園の中に位置づけている」(岩手県陸前高田市)などの指摘があった。

費用については「保存と撤去では費用が違う」(気仙沼市)などとしているほか、維持管理費を含めた支援拡大を求めている。
国が「住民の合意形成」を要件の一つにしていることに対して、「合意形成は難しい」(石巻市)など千日の苦労をにじませている。

遺構の保存を検討していない岩手県釜石市は被災した建物の一部や遺品などを集めた追悼施設整備を予定しており、「遺構そのもの以外も支援対象になるよう検討してほしい」としている。

産経新聞より

投稿者 trim : 2013年12月12日 10:34