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2013年11月05日

農業生産法人の条件緩和

安倍晋三政権が農業改革を打ち出す中、農業に取り組む企業の動きが活発になっている。

農業関連企業だけでなく、商品のアピールや食材の安定調達を狙う食品や小売業へと業種は広がり、2009年の農地法改正以後の一般法人の参入はNPO法人なども含めて1,200件を突破。

大規模な投資が可能な企業は、新規就農者の受け皿としても期待されており、政府は国家戦略特区として農地の購入、保有もできる「農業生産法人」の条件緩和も検討している。


10月15日、東京・霞が関で開かれた規制改革会議の農業ワーキング・グループ。
住友化学アグロ事業部の長久保有之・農業企画チームリーダーは「(一般企業にも)農地保有を認めるオプションが一定の年数、例えば参入5年後にあってもいいのではないか」と訴えた。

肥料や農薬、ビニールハウスの製造から農作物の販売支援までをグループで手掛ける同社は、イチゴを栽培する住化ファーム長野(長野県中野市)を2009年に設立。
肥料などの効果を現地で実演する展示農園を、全国7カ所で農地を借り入れて展開している。
ただ、現行制度の下では「一部の地権者から途中で返還を求 められれば、事業継続に支障が生ずる」(長久保氏)という懸念が消えない。

企業が農業に参入するには現在、2つの形態があり、このうち一般法人の場合は農地は貸借に限られ、保有できない。
農業生産法人の場合は農地を保有できるが、農家や農協など農業関係者以外の出資は特例を使っても資本金の半分未満に制限され、役員の過半数が農業関連業務に従事する必要がある。

2009年の農地法改正で一般法人でも貸借ならば参入区域に制限がなくなったことを受け、改正法施行の2009年12月から2013年6月までに1,261法人が参入。
参入ペースは改正前と比べて5倍に増えた一方、法改正前に参入した436企業のうち約2割が撤退した。
地元の農家と異なり、事業の参入・撤退が激しい企業参入の増加で、荒れ地が増えかねないという懸念も指摘される。

住友化学が各地で展開する住化ファームなどではパートを含む計約70人が働き、1カ所当たり2、3人の社員を現地で採用している。
「1人の求人に30~40人の応募がある。個人より企業のほうが農業をやりたい若者も就農しやすい」(住友化学アグロ事業部)と担い手の育成にも貢献している。
ただ、農水省は「日本は地価が高く、農地の取得価格は借り入れ料の100年分に当たる。
投資の回収は難しく、企業も貸借方式を望んでいる」と企業の農地保有の全面解禁には慎重だ。

小売り大手のセブン&アイ・ホールディングスも、販売期限が切れた食品を堆肥としてリサイクルし、野菜などを栽培する「セブンファーム」を全国9カ所で展開し、そのうち千葉県富里市など2カ所は農協と共同出資する農業生産法人だが、いずれも農地は借り入れだ。

兼業農家も含めて農業を主な仕事にしている「基幹的農業従事者」は2010年に205万人と、20年前から3割減少。
平均年齢も66歳と高齢化し、後継者不足が深刻だ。
その対策として「農林水産業・地域の活力創造本部」(議長・安倍首相)は企業の参入加速を提示。
一部地域で規制緩和を先行実施する「国家戦略特区」でも農業生産法人の設立条件を緩める方向だ。

政府は11月末までに農業強化策を示すが、農業の新たな担い手を育て、反転攻勢を実現する道筋を描くことができるか。
日本の農業は再生に向け、大きな岐路に立っている。
【会田聡】

SankeiBizより

投稿者 trim : 2013年11月05日 11:27