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2013年07月09日
夏の関電脅かす“海のモンスター”
夏の到来とともに、今年も関西の電力供給を脅かす“モンスター”がやってきた。
クラゲだ。
大量発生に見舞われた昨夏は、火力発電所の出力を最大で原発1基分に相当する120万キロワット低下させた。
関西電力は今夏、4億円を投じて対策を講じる。
しかし、今年も既にクラゲによる火力発電の出力抑制が15件発生しており、クラゲ対策を誤れば、電力供給に支障を来す恐れも。
関電はモンスターの襲来にひやひやしている。
海面のネットに目をこらすと、キノコのような浮遊物がびっしり―。
今年4月、関電の相生火力発電所(兵庫県相生市)の取水口に早くもクラゲが襲来した。 このとき、同発電所の出力低下は避けられたが、担当者は「気を抜けない状況が続く」と話す。
護岸沿いの海面には、沸騰しているかのように無数の「泡」がわき立っていた。
実はこの泡はクラゲ退治の新兵器。
クラゲ侵入の防止網に付着したクラゲを海面に浮かせ、ポンプで吸い上げやすくする仕組みだ。
「今年はクラゲ対策を強化した」。
関電の八木誠社長は自信を示す。
昨年の反省を受け、関電は新たに3つの対策を取った。
(1)クラゲ網の強化
(2)網を支えるおもりの大型化
(3)クラゲを強制的に吸い上げるポンプの設置―。
いずれも、取水口の前に張った防止網から内部へクラゲを入れさせないための措置だ。
網の目は6センチから4センチに細分化。
昨年、大量発生で網が破れた経験から強度も増した。
網に張り付いた大量のクラゲで網がたわんでしまった昨年の教訓から、おもりも大型化した。
網に張り付いたクラゲはポンプで強制的に吸い上げる。
万一、網の目をくぐり抜けても、2段階の除去スクリーンでガードする。
発電所では、発電機を回した蒸気を海水で冷やし、再利用する。
このため、取水口から海水を取り込めないと、運転を抑制しなければならない。
昨年は大阪湾内で大量発生したクラゲが火力発電所の取水口に押し寄せた。
発電機の出力抑制や停止は、例年比5倍の63件に達し、一時は最大120万キロワット分の供給力を失った。
昨年7月に再稼働した大飯原発(福井県)の効果を打ち消しかねず、ひやひやの電力供給だったようだ。
今年も4月29日に昨年より半月早く、南港火力発電所(大阪市住之江区)にクラゲが来襲。
以降、6月末までに南港火力と舞鶴火力発電所(京都府舞鶴市)の2発電所で25%以上の出力抑制を余儀なくされた事案は計15件、発生した。
幸い、電力供給に支障はでなかったものの、関電の緊張は高まっている。
今夏は、大飯原発が9月まで継続運転できるため、電力供給の予備率は3%と必要最小限は確保した。
しかし、6月には、平成23年の東日本大震災以降では初めて電力使用率が95%を突破するなど予想外の猛暑に見舞われた。
「クラゲ阻止に関西の電力安定供給がかかっている」(関係者)といっても過言ではない。
クラゲ対策は進むが、発生そのものを抑える有効な手段はなく、取水口への侵入を防ぐしか手立てはないという。
ちなみに、昨年のクラゲ大量発生を受けて、関電には、「クラゲ発生予測シミュレーションソフトはいかがですか」、「クラゲからコラーゲンを抽出したいので、捨てるのであれば送ってほしい」など、ちょっと変わった要望も寄せられたとか。
関電は産業廃棄物としてクラゲを処分している。
【内山智彦】
産経新聞より
投稿者 trim : 2013年07月09日 10:47