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2013年06月19日

ホッキ貝で上薬

福島県の会津工高セラミック化学科3年の西村和真君(18)は同校の大浜達明教諭(52)と二人三脚でホッキ貝の殻を活用した上薬を考案し、陶磁器に独特の淡い色を浮かび上がらせる技術を開発した。

全国の高校生が出品した「高校生セラミック作品展」で、この技術を使った作品が県内で初めて日本一に輝いた。

貝殻はいわき産で、東日本大震災からの復興につながる可能性がある点も高く評価された。


震災で苦しむ県民の力になりたいという思いが大き な成果につながった。

西村君が大浜教諭と挑戦した作品は、陶磁器の中でも難しいとされる「油滴天目茶碗(ゆてきてんもくちゃわん)」。
ホッキ貝の貝殻の粉を使った上薬を掛けて焼いた結果、特有の銀色の斑紋(はんもん)の中に、貝殻の粉末による独特の輝きを生み出すことに成功した。
光に反射し、見る角度によって青や茶などさまざまな色が万華鏡をのぞいたような不思議で華やかな表情を見せ、これまでの茶碗にはない仕上がりとなった。

大浜教諭は震災前、「エコ」「リサイクル」をキーワードにした作品づくりを考えていた。
海外の焼き物で、貝殻を上薬に混ぜて塗る技法があることを書物で読んだことがあり、食べた後は処分されるホッキ貝の殻を知人に送ってもらった。

その頃、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故が発生した。
大浜教諭と西村君ら生徒は、授業の中で話し合い、作業に取り組んだ。
陶芸部に所属していた西村君は「エコや復興のために使えるかもしれない」と思って研究を進め、何度も粉の調合割合や焼く温度を変え調節した。
むらなく丁寧に上薬を塗る技術が特に難しかった。
薄く塗れば色が出ず、厚く塗ると泡ができた。
西村君は諦めずに丁寧な作業を続け、鮮やかな斑紋と美しい輝きを帯びた作品を生み出した。

西村君は入学後、バスケットボール部に入った。
病気を患い、手術と入院を余儀なくされ退部した。
「物づくりに打ち込みたい」と一年生の夏ごろ陶芸部の門をたたき、大浜教諭と1年がかりでホッキ貝の殻を使った上薬開発に取り組んだ。

西村君は「いい作品ができたと感じた。技術が広まり、本県の復興につながればうれしい」と会津の「技」といわきの素材の融合に胸を張った。
大浜教諭も「ひたすら打ち込む、西村君の人柄が結果に出た」と“まな弟子”の快挙を喜んでいる。

大浜教諭は、調合割合や焼き上げる温度など、貝殻を活用し色合いを出す新たな技術を公表する考え。
技術特許などは取らず、広く活用され、本県の復興につながることを望んでいる。
20、27日に会津若松市で開く企業や同校OB向けの講演会で紹介する予定。

福島民報より

投稿者 trim : 2013年06月19日 15:30