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2013年05月27日

秋田で地域密着型メガソーラー

再生可能エネルギーによる発電事業を「市民の力」で実現し地域経済の活性化と低炭素化に結びつける動きに注目が集まっている。

その一つが、秋田市の農村地帯で11月の稼働を目指す大規模太陽光発電所(メガソーラー)事業だ。

発電事業者のエナジーイノベーション(秋田市)は、住民の出資で設備を建設し、配当の一部に秋田県産品をあてる地域密着型メガソーラーのモデルケースを築きたい考えだ。

「地域住民に愛される発電所を作りたい」。
同社の小野隆史代表取締役はLPガス販売などを手がける実家のオノプロックス(秋田市)で働きながら、そんな思いを強め起業。
秋田市大沢地区に「大沢大規模太陽光発電所」を建設・運営することにした。

その実現に向け、遊休地の有効活用を検討していた大沢地区の地権者12人の合意を得て、4.1ヘクタールの土地を20年間活用する賃貸借契約を締結した。

建設工事は6月中にスタートさせる。
出力は1,646キロワットで、建設費は4億5,000万円。
このうち約6,000万円を市民の出資で賄う予定だ。

具体的には、小口出資で地域を応援したい住民や投資と位置づける人らの要望に広く応えるため、一口10万、30万、100万円という3種類の市民ファンドで資金を募集する。
ファンドの配当目標は1~3%だ。

配当は出資額によって異なるが、現金と県産品を組み合わせる。
30万円を出資する場合、20年間運用された後に償還され、運用期間中に毎年9,000円分の県産品を配当として受け取る。

配当の連絡を受けた出資者は地酒や米、スイーツ、伝統工芸品など多彩な県産品が集まる電子商取引サイト「秋田ずらり」を閲覧。
気に入った商品を発注すると、生産者から注文の品が届けられる。

出資者の思いが宿る発電事業の実現も売りだ。
出資者の思いを陶器プレートに焼き付け、発電所内に展示する企画「未来へのメッセージ」を用意する。

想定する年間発電量は152万キロワット時で、一般家庭の約380世帯分の電力需要を賄える。
これを再生可能エネの固定価格買い取り制度に基づき、東北電力に1キロワット時当たり42円で売電する。
年間の売電収入は約6,400万円に達し十分に採算がとれる。

ただ、降雪地帯の土地にメガソーラーを建設すると、日射量を確保するための除雪と草取りが同時に必要になる。
このためエナジーイノベーションは、その作業を地元の農業法人に委託する。
「日照時間が短く、雪が積もるハンデなどを乗り越え再生可能エネシステムの新たなモデルケースとなりたい」(小野代表取締役)考えだ。

市民ファンド型太陽光発電をサポートするNPO法人・太陽光発電所ネットワーク(東京都文京区)の都筑(つづく)建事務局長は「テーマ性を持って発電の目的に共感するのが市民ファンド型の特徴だ」と強調する。
その上で、「地元でエネルギーを生み出し、売電収入などを地域に還元する循環を作り、地域雇用創出につなげるべきだ」と指摘。
大資本主導によるメガソーラー計画が際立つ現状の動きを問題視する。

加えて、買い取り制度に基づく太陽光発電事業の認定申請が出力50キロワット前後の設備に集中していることを踏まえ、市民や中小企業が参加しやすい政策に見直す必要性を説く。

当然、やみくもに市民参加を促すのではない。
市民ファンド型発電の質を維持するための支援環境づくりや環境と共生した発電設備の導入策も意識する必要がある。
再生可能エネの普及活動に“真”に共感する住民を増やす視点が問われる。
【臼井慎太郎】

SankeiBizより

投稿者 trim : 2013年05月27日 14:22