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2012年06月23日
伝説の江戸野菜
農家のいない墨田区で現在、江戸時代に生産が盛んだった地場野菜「寺島なす」を復活させ新しい視点で「まちおこし」として盛り上げようとするプロジェクトが進行している。
白鬚神社(墨田区東向島3)周辺はかつて「寺島」という地名で、江戸の町に新鮮な野菜を供給する近郊農村として栄えていた地域。
隅田川上流から運ばれてくる肥沃(ひよく)な土壌がナスの生産に適し、1828年の「新編武蔵風土紀稿」という文献にも「形は小なれども早生(わせ)なすと呼び賞美す」と記されている。
いつしか「寺島なす」と呼ばれ、盛んに生産されるようになるが、関東大震災以降は宅地化が進み、以後は幻のナスとして忘れ去られようとしていたという。
数年前に種子が「農業生物資源研究所」(茨城県つくば市)に保存されていたことがわかり、2009年に地元の第一寺島小学校が創立130周年記念事業として栽培に成功したことで脚光を浴びた。
「寺島・玉の井まちおこし委員会」が立ち上げた「寺島なす復活プロジェクト」は、学校や路地での園芸、マンションのベランダなどの家庭菜園で「寺島なす」を作ってもらい、集荷システムを確立して、最終的には中央市場への出荷を目指すもの。
「たくさんの人に関わってもらうことで地域を愛するネットワークが生まれる、まちがもっと元気になるように活動を続けたい」と、同委員で青果商を営む阿部敏さん。
6月20日にはまちおこしの拠点である「玉ノ井カフェ」(東向島5)で「寺島なす育成相談会」が開かれたほか、22日には墨田区役所内で、成蹊大学名誉 教授・高木新太郎さんの講演「寺島なすの歴史」に続き、パネルディスカッション「寺島なすでおこす『まちおこし』の野望」が開かれた。
パネルディスカッションでは「江戸東京・伝統野菜研究会」の大竹道茂さんによる、他の自治体の地場野菜をつかったまちづくりの事例説明を軸に、区の保健計画課の秋田昌子さんは「食育」の視点から、「すみだ清掃事務所」の谷田辺陽介さんは「リサイクル」や「エコ」の切り口から、「墨東まち見世事務局」の曽 我高明さんは「アート」の観点から、それぞれの「野望」を語るなど、白熱した議論を展開した。
同プロジェクトは今後、6月30日と7月1日に区役所で行われる「すみだ環境フェア2012」へも参加を予定しているほか、7月4日には「玉ノ井カフェ」でアーティストのEAT&ART TAROさんによる「寺島なす試食会と料理法探検」などのイベントを開いていく予定。
「寺島なす」の魅力について、大竹さんは「そのままだと堅いが、加熱するととろみが出てクリーミーになるので、焼きナスやてんぷら、煮びたしにも最高。鶏卵と同じくらい小ぶりでつやのあるものが、中身が詰まっていておいしい」と話す。
すみだ経済新聞より
投稿者 trim : 2012年06月23日 23:09