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2012年05月03日

銘醸地にふさわしい酒米

銘醸地の広島にふさわしい酒米を―。

広島県は今年度から10年がかりで、新たな酒米の研究に乗り出した。

日本酒の消費量が低迷する中、全国各地の自治体が新しい酒米で独自色を出そうとしのぎを削っており、兵庫、京都と並ぶ酒どころとして、負けじと参戦を決めた。

県内酒造関係者の期待も大きい。

県が目指す基本方針は、従来の酒米より
▽収量が多い
▽酒造りがしやすいよう軟らかい
▽地球温暖化に対応するため高温に強い
―ことなどだ。

水稲の開発は、交配と選抜を繰り返し、品種登録の出願まで10年以上かかると言われる。
研究を担う県立総合技術研究所農業技術センター(東広島市)の勝場善之助・栽培技術研究部副部長(49)は「高温耐性がある九州の品種や、酒造りの際に米が溶けやすい岡山県の『雄町』系の品種などを候補に選抜を進めていく予定」と話す。
今年は、まず十数種類の苗の育成を始めている。

研究は、県の研究機関を含めた6機関で進める。
県では農業技術センターが育種、食品工業技術センター(南区)が醸造技術を担当、近畿中国四国農業研究センター(福山市)も、育種協力と大規模な田を提供する。
JA全農ひろしまや県穀物改良協会、県酒造協同組合は、栽培条件や醸造適性を評価する役割だ。

3年で新しい酒米のコンセプトを具体的に固め、6年で候補を五つまで絞り込む。
酒米候補を使って試験的に醸造を始めるのは、7年後の19年ごろになるという。

県は酒米の改良は進めてきたが、新しい酒米は00年に品種登録した「千本錦」以来、12年ぶりとなる。
背景には、アルコール離れなどで消費が落ち込む日本酒業界の厳しい環境がある。

国税庁によると、日本酒の消費量は1973年度の約176万キロリットルをピークに、10年度は約60万キロリットルにまで激減した。
需要低迷と比例して県内の酒米栽培面積も減少。
主力の「八反錦」が09年度の231ヘクタールから、11年度は184ヘクタールになるなど県産酒米は軒並み栽培面積を減らしている。

酒米の世界では、1936年に兵庫県の奨励品種になった「山田錦」が今でも「王者」として認知されているが、個性化を図って生き残ろうと他県では独自の酒米が相次ぐ。
近隣県でもこの10年で「西都の雫」(山口県)、「しずく媛」(愛媛県)などを使った日本酒が投入されている。
県酒造協同組合も「酒どころとして負けていられない」と鼻息は荒い。
【植田憲尚】

毎日新聞より

投稿者 trim : 2012年05月03日 21:54