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2012年02月20日

イネ科植物「ソルガム」

東京電力福島第1原発の事故に伴い放射性物質で汚染された農地をイネ科植物「ソルガム」で効率よく浄化する―。

そんな技術の実証試験が4月から福島県で動き出す。

仕掛けるのは、農業ベンチャーの「アースノート」(沖縄県名護市)と東京大、名古屋大、東京農工大。

除染効果を証明し、栽培したソルガムをガソリン代替燃料や発電補助燃料などとして販売する環境保全の新産業育成も狙う。

産学チームが注目するのは半減期が長い放射性物質セシウムで汚染された福島の農地で、土壌中のセシウムをソルガムで吸い上げる技術の実証を目指す。

ソルガムは、幅広い気候で育つ熱帯アフリカ原産の植物。
成長が早く、なかには背丈が4メートルを超える品種もある。
これまでも過剰な肥料投入で作物を作りにくくなった土壌を修復する効果が知られていた。

アースノートは東日本大震災前からそうした特性に着目。
震災後の昨年5月から、「福島の農地や土壌を守りたい」という地元農家の要請を踏まえ、ソルガムの栽培試験を進めていた。

これまでの大学との試験では、放射能の影響を受けた畑や水田で、ソルガムに属する200種と、土壌浄化の効果が見込まれるヒマワリやナタネなどを栽培、放射性セシウムの吸収能力を比べた。
その結果、セシウム吸収量が最大でヒマワリの約200倍に達するソルガムの品種が見つかった。

その成果を引き継ぐ第2フェーズが今回の実証試験だ。
福島県須賀川市の岩瀬牧場に設ける作付面積2.7ヘクタールの実験場などで5年かけて行う。

焦点の一つが、ソルガムの吸収メカニズム。
土壌中のセシウムは、栄養素を吸い上げる植物本来の能力を利用して取り除く。
その仕組みを基礎から解明し、ソルガムの吸収能力を高める栽培技術の開発に役立てる。

同時に、ソルガムをバイオ燃料の製造にも生かす。
収穫したソルガムの糖液を絞り出し、その液を実験プラントで発酵させバイオエタノールを生産するという構想だ。
その過程でソルガムによるエネルギー利用に賛同する事業者を募る。
将来的には福島に約2000ヘクタール規模のソルガム産地を創出したい考えだ。

「原発事故による農産物への風評被害や土壌汚染で、福島の農業生産者らは働く意欲を失いつつある。技術で貢献したい」

こうした思いで、アースノートの徳永毅社長はソルガムを生かす「エネルギー農業」を福島県で育てる構想も温める。
昨年10月には徳永社長の働きかけで、農業再生を目指す一般財団法人「東北農業支援ネットワーク」(郡山市)を設立した。

放射性物質で汚染された農地の土壌浄化をめぐっては、農林水産省が昨年9月に除染方法をまとめた。
その一つが、放射性セシウムの吸収能力が高い植物による除染だ。
これに沿って農水省は2012年度からの3年計画で“高吸収植物”の探索などを進める方針で、3月中に委託先の研究機関を決める。「有望なものが見つかれば栽培し実証したい」(農水省)という。

日本総合研究所の古賀啓一副主任研究員は、農水省が除染の有効性を確認した「表土を削り取る方法」だけでなく、高吸収植物を使えば「除染作業で発生する汚染土壌の減容化に貢献できる」と一定の評価を示す。

福島県内には、イネの作付け制限を受ける土壌1キログラム当たり5,000ベクレル以上の農地が約8,300ヘクタールある。
その全ての表土を削った場合の土の量は約300万トンに上り、その保管場所の確保などの課題がある。この点でも高吸収植物の活躍が期待できる。

さらに古賀氏は「エネルギー農業は離農問題解決の一助になる」とも評価。
その上で「土壌の改変過程で生物多様性保護に配慮することも必要。多面的な視点で研究し除染技術の選択肢を広げるべきだ」と指摘する。
【臼井慎太郎】

フジサンケイ ビジネスアイより

投稿者 trim : 2012年02月20日 11:37