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2012年01月29日
斜めぶった切りで高層ビル解体
戸田建設は、超高層ビルを対象とした環境に配慮した新しい解体工法を開発した。
床面(スラブ)を斜めに切断することで、これまで必要だった上部からの荷重を支える「支保工」と呼ぶ仮設構造物が不要なほか、粉塵(ふんじん)を発生することなく床面を解体でき、工期も短縮できる点が特徴だ。
床面切断時に用いる切断機も開発し、その燃料も排食用油から作られる軽油代替のバイオディーゼル燃料を用いるなど細かな配慮もしている。
今後、増加が見込まれる超高層ビルの老朽化に対応し、解体現場の二酸化炭素(CO2)発生ゼロ化を実現したい考えだ。
開発したのは「TO-FOACUT工法」と呼び、床面を斜めに切断するのが最大の特徴だ。
解体時には床面をブロック状に切断していくが、ブロック状の向かい合う2辺は斜めに切断、残りの2辺は垂直に切断する。
2辺を斜めとすることで、4辺を切断し終えてもブロックが下の階に落下しないため、支保工を設置する必要がない。
切断機のブレード(刃)の冷却と切粉の固着を防止するために必要だった大量の水を使わないようにすることも課題だった。
これを解決するため、大量の水の代わりに、界面活性剤を水で希釈し、その溶液から出る泡を冷却などに用いる。
このための専用の切断機も開発した。
切断機についても、ブレード自体とそのカバーを工夫し、騒音も従来工法より20~30デシベル低くした。
ただ、万が一、解体中に大規模地震が発生するなど悪条件が重なった場合、落下する可能性も残るため、3辺を斜め切断すれば確実に落下を防止できることが証明できているという。
このため、実際に解体工事を請け負った場合は、3辺の斜め切断などを採用することになるという。
同社はこの切断手法の開発に先立ち、アセチレンガスではなく、自ら生成した水素ガスを用い、CO2を発生させずに鋼材を切断する「TO-HYCUT工法」と呼ぶ方法を開発した。
従来の工法と比べ切断能率は2.5倍、切断に用いるガスのコストも約3分の1に抑えることを実現した。
これに続いて、床板の解体手法の開発に着手したわけだ。
床板と鋼材を切断する新技術を合わせれば、解体に必要な工期は、14階建て、高さ60メートル超のビルの場合で、従来工法が3.5カ月程度かかっていたのに対し、新工法は2.3カ月で完了できるという。
従来の高層ビルの解体工法では、支保工を設置するほか、ビルの最上階に“屋根”をかけたり、周囲に仮設足場を付けて粉塵などの悲惨を防ぐ覆いを付けるなどの工程が必要で、それだけで2~3カ月を要していた。
戸田建設の三輪明広・技術研究所主管は、「今年度中に技術を完成させ、2012年度から超高層ビルの解体現場に適用していく予定」と話す。
20~30年以上前に建てられた高層建築物は老朽化が進み、地域の再開発などに伴い解体例も増えてきた。
解体方法としては、建物を覆った後で解体する技術がゼネコン各社で進められている。
戸田建設はこれまでの要素技術を組み合わせた新工法によって、隣接する建物との間が狭く、解体時の騒音などを抑えたい都心部に最適な解体工法により、他社と差別化を図る。
今後も、解体現場の環境対応強化を目指して技術開発を進め、普及させたい考えだ。
【那須慎一】
産経新聞より
投稿者 trim : 2012年01月29日 11:27