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2012年01月08日

自給自足からビジネスへ

生活苦から始めた自給自足生活が、今やビジネスの種に―。

2男2女を抱える茅ケ崎に住む女性が同市芹沢の畑で無農薬、有機農業に挑戦、野菜の宅配を手掛けた。

野菜の評判は口コミで広がり、今では生産が追いつかないほど販路を拡大している。

直井景子さん(42)は25歳でアクセサリーショップを経営。
しかし、35歳の時に過労で倒れ、対人恐怖症や失語症になった。
夫とも別れ、子ども4人を連れて家を出た。

「とにかく食べ物をつくらなきゃ」。
生活費を稼ぐ必要があるのに、外に出られない。
子ども2人の不登校も重なった。人目を避けるようにして、養鶏や家庭菜園で自給自足の生活を続けた。

本格的に農業に取り組み始めたのは、2010年から。
県の「かながわ農業サポーター制度」を活用し、2,500平方メートルの農地を借りた。
現在はスタッフ2人を雇って週に約30~50種類を収穫、宅配先は約50件に上る。

こだわりは畑の土だ。
鶏の餌として生ごみでミミズを飼育していたこともあり、ミミズが畑の土の状態を教えてくれる。
「自己流だから九十九パーセントが失敗。だからこそ、いいものがつくれるようになった」

農薬を使わないため、野菜の成長は遅い。
スーパーの野菜のように実も大きくならないが、「甘くて、マヨネーズなどの油と絡めなくても子どもが食べられる」と評判という。

最初は近所の人への宅配から始め、現在は都内のレストランにも卸している。
無農薬で安全な野菜への需要は高く、ショップ経営時の人脈も販路拡大に役立っている。

人に会えなかった時期を乗り越え、ビジネス感覚も取り戻した。
直井さんは「農業者が一技術者として見直される時期に来ている。
責任あるつくり方をし、ブランド化する時代だと思う」と話す。

農業にたどり着いたのも「縁」だと振り返る。
「今できることが農業なので、環境や人のせいにせず、できるところまで精いっぱいやりたい」と、目の前にあることに向き合っている。

自ら歩んできた道を「女農業道」と称する。
その理由を「今まで歩んできた『道』があるから。ショップ経営、農業、母親業に没頭して、それがすべて自分自身の道っていうこと」と力強く話した。

カナロコより

投稿者 trim : 2012年01月08日 18:44