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2011年12月18日
「奇跡の一本松」
空高く伸びた一本の松を山の稜線(りょうせん)から姿を見せた朝日が照らす。
東日本大震災で壊滅的な被害を受けた岩手県陸前高田市の景勝地「高田松原」で、津波に耐えた「奇跡の一本松」。
7万本の中で唯一、生き残った松は、復興のシンボルとして被災地だけでなく、全国にも希望と勇気を与えてきた。
同市内では一本松のTシャツやキーホルダー、お菓子なども販売され、経済活動再開にも一役買った。
しかし、津波で海水をかぶり漂流物で傷つき“満身創痍(そうい)”の一本松を待っていたのは、地盤沈下による冠水と、仲間を失ったため直射日光を過剰に浴びる過酷な環境だった。
復興の象徴を守ろうと、地元の「高田松原を守る会」や財団法人の「日本緑化センター」などが保護活動を展開。
高潮時に海水が根元に入らないよう周囲に堤防を施したり、直射日光や潮風を防ぐネットを巻くなどしてきた。
7月には新芽や緑葉が伸びたことを確認。
しかし、猛暑が過ぎた9月には新芽が変色するなどして衰弱、10月には樹木にとっては命取りの根腐れが判明した。
日本緑化センターは今月13日、「蘇生は絶望的な状況」と発表。守る会の鈴木善久会長(66)は「市民に希望と勇気をくれたのに…。悲しく残念」と肩を落とした。
しかし一方で、技術を駆使して一本松の“子供たち”を育てる活動も動き出した。
14日には東京都内で関係者が会見。
一本松の接ぎ木から3本のクローン苗を、枝に残った松ぼっくりから採取した種子から18本の苗を、それぞれ育てることに成功したと発表。
「希望の光をつなぐことができた」と胸を張った。
後継となる木の育成に一定のめどが立ち、関係者の表情も明るい。
鈴木会長は「『ありがとう』と一本松をねぎらいたい。
育った苗から高田松原の再生を目指すことが一番の恩返しになる」と力を込めた。
【松本健吾】
産経新聞より
投稿者 trim : 2011年12月18日 16:08