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2011年11月18日

ホテルに「寺子屋」

南三陸町のホテルで、小中高校生を対象にした「自習教室」が連日、開かれている。

仮設住宅の不便な生活で、学校での学習が遅れたり、進路選択に不安を抱える子供たちもいる。

この試みは、子供たちが勉強に励めるように静かな環境を提供しようというものだ。
被災地にうっすら灯る明かりは、夜遅くまで消えることはない。


南三陸町の「南三陸ホテル観洋」8階の和室に設けられた自習教室。
寺子屋にちなんで「TERACO」と名付けられた教室には、学校を終えた子供たちが次々と集まる。
宿題やドリルなどを抱え、段ボールで作った仕切りの机に座る。

「この式はどうやって解くの」「ここの漢字はなんて読むの?」。
子供たちの疑問に答えるのは、東京都などからボランティアで集まった学生たちだ。

自習教室は、町内の学校再開もままならない4月20日、避難所となっていた志津川小学校の体育館から始まった。
泊まり込みでボランティアをしていた小楠あゆみさん(46)が、避難所の子供たちに「勉強する気持ちを忘れないでほしい」と、先生役の学生ボランティアを募り、手書きのテキストでスタートした。

6月19日には、2次避難所となっていたホテル観洋の協力を得て、ホテルでの“寺子屋”を開設。
現在、仮設住宅に暮らす子供ら105人が登録している。
高校・大学受験や定期テストの勉強のため、平日は小学生が午後5~6時、中高生が午後7~11時の時間に教室に通っている。
土日祝日も開かれている。

小楠さんは「避難所の子供たちを見て、目標を失っているように見えた。未来を担う子供たちに、勉強に集中できる場所や健やかなコミュニティーを用意することが長期的な復興に欠かせない」と考えている。
被災で学業が損なわれ、進路を制限される子供たちや家庭のために、親たちから進路相談も受けている。

仮設住宅から自習教室に通う小学5年の三浦紡(つむみ)さん(10)は「自習教室は机に座って集中できる。先生たちも楽しい」と声を弾ませる。
今はデザイナーの夢に向かってほぼ毎日、自習教室に通っている。

志津川湾をはさんで見える壊滅的な被害を受けた町の景色は、ノートを埋めるごとに夜闇に溶けていく。
小楠さんは「今だけを切り取るのではなく、進学などの夢は持ち続けられることを伝えたい。そして、夢を叶えた子供たちに町の復興に当たってほしい」と、望んでいる。
【是永桂一】

産経新聞より

投稿者 trim : 2011年11月18日 10:29