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2011年11月06日
NTT西、クマゼミに勝った
西日本を中心に生息するクマゼミが、夏にNTT西日本(大阪市)の光ファイバー通信の家庭用ケーブルを、木の枝と間違えて産卵し断線させる被害が平成17年ごろから多発していたが、NTT側が平成21年に開発した最新型ケーブルは、3年連続で被害が0件だったことが分かった。
単純にケーブルの被膜を厚く硬くすればよさそうだが、ケーブルが太く硬くなり過ぎれば敷設工事の障害となる。
頭を抱えていたNTT側とセミの攻防は、NTT西に“軍配”があがったが、その裏には猛暑とたたかう研究員たちの苦労があった。
クマゼミは、体長約60~70ミリの大型のセミ。
毎年7~9月、枯れ枝などに直径約1ミリの産卵管を突き刺して卵を産みつけるが、光ファイバー通信の幹線から枝分かれした家庭用ケーブルを、枯れ枝と“勘違い”して産卵。
ケーブルに穴を開け、中の心線を傷つけて通信を遮断させる被害が11年に初めて確認された。
その後、光ファイバー通信の敷設エリアの増加に伴い、ピーク時の20年には約2,000件の被害があった。
NTT西では16年と18年、クマゼミ対策で改良したケーブルを導入して被害を減らすことに成功したが、被害ゼロを目指し、今回の3代目ケーブルの開発に着手。
“敵”の生態を分析するため、20年の夏には、NTT側の研究員が大阪市内でクマゼミを捕獲。
毎日約60匹のクマゼミを捕まえ、実際にケーブルに産卵する様子を観察した。
その結果、ケーブルを覆うプラスチック系被膜を、産卵管でも傷つきにくい硬さに改良したうえ、さらに被膜の最薄部の厚さを約0.4ミリに保つことで、産卵管がケーブルの心線に達しない最新型のケーブルが完成した。
開発に携わったNTT情報流通基盤総合研究所アクセスサービスシステム研究所(茨城県つくば市)の主幹研究員、高見沢和俊さん(48)は「(被膜を)単純に硬くすれば当然、クマゼミも産卵が不可能になることは分かっていたが、硬くしすぎるとケーブル開通工事の作業効率が落ちるため、そのバランスが難しかった」と苦労を打ち明ける。
顕微鏡で0.1ミリメートル単位の刺し傷の深さを分析する毎日だったという。
現在、NTT西の事業エリアに敷設されている光ファイバーケーブルのうち、既に9割以上がこの最新型に変更済み。
21年以降も、毎年夏にクマゼミの捕獲と観察を続けてきたが、今年の夏も最新型の被害が0件だったことで、NTT側は最新型ケーブルをもって、クマゼミ対策を終了した。
高見沢さんは「クマゼミの自然な産卵環境を維持するために、酷暑の中、冷房もつけずに実験を続けてきたので、その開発が実を結んだことは大きな喜び」と話している。
産経新聞より
投稿者 trim : 2011年11月06日 16:46