« 最先端エコ・スポット | メイン | 「上州富岡駅舎」 »

2011年09月14日

最先端エコ・スポット

2012年5月22日、東京の新しいシンボル・東京スカイツリーが開業する。

自立式電波塔の高さ634m、大空に向かってスッと伸びる東京スカイツリーのお楽しみは、もちろん展望台からの眺望だ。

だが、見るべきものはそれだけではない。
東京スカイツリーのある「東京スカイツリータウン」は、業平橋駅から押上駅までの東西400m、広さ約3.69haのエリアで、商業施設「東京ソラマチ」や水族館、ドームシアター、広場や公園、オフィスビル「東京スカイツリーイートスタワーズ」などが設けられる。

実はこの「東京スカイツリータウン」全体が、最先端省エネ技術を導入したエコ・スポットになるという。

「東京スカイツリータウン」の環境に対する取り組みは、多岐にわたる。

まず第一に、スカイツリーの照明はオールLED。
6種類、合計1995台のLED照明が、美しいライティングを演出する。
従来の消費電力と比較して、パターンによって約43%、約38%の省エネを実現するという。

また、「東京スカイツリータウン」や周辺の建物に導入する地域冷暖房(DHC)に、地中熱利用システムを導入している。
これは、地中に水を循環させることによって、夏は冷たい水、冬は温かい水を、機器の冷却に利用し、さらなる省エネ効果をあげるというもの。
保有水量7,000トンという大容量水蓄熱槽を設け、夜間に作った冷暖房用の冷水・温水を貯めて、昼間に利用することにより、電力のピークシフトに貢献する。

さらに、「雨水貯水槽」に降雨を溜め、トイレの流水や屋上緑化、太陽光発電の冷却などに使う。
ゲリラ豪雨などの時に、水を一時的に溜める「抑制槽」も設ける。

屋上庭園やルーバー部には太陽光発電を設置、館内照明に活用する。
館内各所にはそうした省エネ効果がわかるモニターも設置されるという。

東武タウンソラマチ 施設管理本部の塚原啓司部長によると、「こうした取り組み全体で、同規模の既存施設と比較すると、二酸化炭素の排出を30%削減できます」とのこと。
まだ開業前なので、控えめに計算しているというが、この数字は驚きだ。

なかでも興味深いのは、さまざまな仕組みを効率よく組み合わせている点。
あげられた方法以外にも、高効率の機器を導入したり、約310店舗もの全テナントに地域冷暖房のための熱量計を設置して、省エネへの理解を高めるなど、運営面からの省エネも積極的に推進するという。

地域冷暖房などの設備は、目にすることができないが、こうした取り組みが良くわかるのが「東京ソラマチ」の屋上庭園だ。
「東京ソラマチ」は、飲食店や雑貨店、活気溢れる「新・下町商店街」や、電波塔に相応しい民放テレビ5局のショップが入る一大商業施設で、屋上緑化された庭園で、太陽光パネルを間近に見ることができる。

「東京ソラマチ」で採用されているのは、CIS薄膜太陽電池。
9階ルーバー部と、8階屋上庭園2カ所の合計3カ所に、222枚のパネルが設置され、20kW発電するという。

CIS薄膜太陽電池を採用した理由は、「東京ソラマチ」の立地と、周囲の建物との兼ね合い。
「タウンは東西に幅広く、建物の高低があり、設置できる場所が限られ、太陽光パネルを設置できる面積は約200平方メートルしかありませんでした。そのうえ、スカイツリーと東京スカイツリーイーストタワーの間に位置しているため、どうしても日陰の時間ができてしまいます。CIS薄膜太陽電池は、年間あたりの発電量にすると、単結晶型より多いのではないかと判断して採用しました」と塚原氏。
「導入してみてわかったのですが、色も黒一色でカッコ良く、デザイン的にも良かったですね」という利点も。

太陽光発電の設置を担当した東武エナジーサポート 環境事業部 岩切幸己氏によると「日照角度や、風の影響を考え、屋上ルーバー部は15度、その他の部分は5度に設置しています。屋上庭園で、太陽光発電のパネルの実物とその発電量を間近に見ることで、エコや節電に対する意識を持っていただけると思います」とのこと。

屋上緑化に流す前の雨水を、太陽光パネルの全面に流し、冷却することで、発電効率を高める試みについては、「ほかではまだない、屋上緑化と太陽光発電の連動です。暑い時期には、緑の中のパネル表面に流れる水流で、絵的にも涼やかに感じていただけるのではないでしょうか」。
黒いパネルの表面を、水が流れる様子は、たしかに風流かも。

「東京スカイツリータウンは、東武グループが一丸となって開発していますが、省エネについても東武グループ一丸となって取り組んでいるのです」と胸を張る塚原氏。
「東京スカイツリータウン」全体で、3万1000平方メートルある屋上の約4,500平方メートルが屋上緑化され、その地下には、地域冷暖房や雨水を利用する最先端プラントがあることを知ると、ぜひ、足もとも見下ろしてみたい。
スカイツリーがオープンしたら、展望台からの眺望を楽しんだあと、最先端エコ技術に満ちた緑豊かな新しい街を、しっかりと見てみよう。
【波多野絵理】

nikkei TRENDYnetより

投稿者 trim : 2011年09月14日 12:49