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2011年08月29日

業種横断で資源リサイクル


小型家電や玩具などの使用済み製品を品目の垣根を越えて回収し再資源化する―。

リサイクル事業の日本環境設計(東京都千代田区)は、こうした機能を果たす国内初の「業種横断型資源循環システム」の実現に向けて動き出した。

関連企業や団体の協力を得て、来年3月までにシステムを構築し運用に移す。

省庁や業界の“縦割り”で進むリサイクル対策に一石を投じることになりそうだ。

同社が目指す仕組みは、事業活動に伴い排出される「産業廃棄物」と、家庭ごみに代表される「一般廃棄物」を横断的にカバーした資源循環システム。
廃棄物処理法に基づく広域認定の申請手続きを経て、業種横断リサイクル事業を展開する。

新事業ではまず、約10品目に横串を通しリサイクルを促す。
小型家電や玩具以外では、衣料品や家庭用プリンター向けインクカートリッジ(インク収納容器)、農業用資材などを取り上げることを検討中だ。

こうした使用済み製品は、学校・自治体や店舗で一元的に集める。
回収拠点数は合計約15,000カ所が目標だ。
加えて、各拠点に不用品を持ち込む消費者のリサイクル意識を高めるため、回収対象品に表示する「統一ブランド」も作る。

資源循環の流れはこうだ。
デジタルカメラや携帯電話などの小型家電の場合、各拠点に集約した使用済み製品を宅配業者などと連携し、同社が愛媛県今治市で運営する「プラスチック油化プラント」に移送する。

プラントに投入した廃家電は400~500度の高温で熱分解され、プラスチック部分が溶けて重油へ生まれ変わり、ボイラー燃料などになる。
同時に回収される金属は、工業製品原料として再利用される。

この仕組みで小型家電メーカーが負担するリサイクル費用などの詳細については、小型家電に含むレアメタル(希少金属)などを回収・再利用する新制度の骨子を提示した環境省の動きを見極めながら詰める。

また同社は、繊維製品から石油代替のバイオ燃料「バイオエタノール」を生産するプラントも今治市に保有しており、その施設も活用する。
具体的には、服に含まれる綿繊維の主成分「セルロース」を特殊な酵素でブドウ糖に変化させ、さらに同物質を酵母で発酵させてバイオエタノールを得ている。
こうした実績も生かす方針だ。

今回の新事業に合わせて、リサイクル設備の増強にも踏み切る。
油化プラントについては、年間処理能力を現在の50トンから、10月をめどに500トンに引き上げる。
その後も段階的に拡張し、2013年に1,500トン態勢を築くことを目指す。

業界の垣根を越えた資源循環に取り組む背景には、硬直化したリサイクル対策に風穴を開けたいとの思惑がある。

日本では、容器包装や家電などの各分野の特性に応じた「個別リサイクル法」が整備されたほか、行政側が廃棄物の区分に従い処理事業を許可してきた。
これらは廃棄物の適正処理を促す半面、静脈事業の効率を高める際の足かせだった。

同社の高尾正樹専務は「生活者から見えやすい効率的なリサイクル態勢が必要。
その視点で消費者とリサイクルを結ぶ『環境動線』を業種横断で作ることにした」と力説する。

業種横断事業について三菱総合研究所環境価値戦略研究グループの萩原一仁グループリーダーは、「まとまった量の使用済み製品を『共同配送』方式でリサイクル拠点に運べば、業種横断システムの効率面の効果をさらに引き出せる」と期待する。

その上で、レアメタルを含む製品が眠る「都市鉱山」が世界需要が拡大する携帯電話やエコカーの“根幹”を支えている現状などを踏まえ、「廃棄物政策にエネルギー・産業政策を横断的に融合する流れを作るべきだ」と指摘する。
環境ベンチャーの挑戦はその潮流を作る契機となりそうだ。
【臼井慎太郎】

フジサンケイ ビジネスアイより

投稿者 trim : 2011年08月29日 15:45