2011年04月03日
BCPが奏功
東日本大震災は、沿岸部を中心に多くの中小企業にも被害を与えた。
壊滅を免れた企業の中には、事業継続計画(BCP)を生かし、早期復旧を果たしたケースがある。
未曽有の危機にどう対応したのか。
宮城県内で取材した。
宮城県名取市のリサイクル業「オイルプラントナトリ」。
海岸近くにある廃油や廃プラスチックの再処理工場は、タンク15基の3分の2が流失しプラント建屋も破壊された。
廃油回収業務は震災後約1週間で再開。
3月22日には残ったタンク車と設備で工場廃水の中和処理も始めた。
「ことし1月に策定したBCPが奏功した」と武田洋一社長は言う。
会社は震災直後、従業員約40人を避難させ、登記上の本社がある内陸側の民家に本社機能を移した。
廃油回収の再開に当たっては、県内の同業者と連携した。
BCPには運送業者など支援を頼める協力会社を盛り込んでいた。
廃水処理などを柱に売上高を5割減にとどめる想定もしていた。
武田社長は「どの設備を復旧させるかなどの手順を決めていたのが大きかった」と強調する。
仙台市若林区の建設業「皆成建設」も建物の一部に被害があったが、地震翌日の3月12日から社員約40人の半数を動員。
復旧作業に向けた地域の被害調査に着手した。
昨年3月のBCP策定を受け、従業員の安否を確認するメールの自動発信システムを導入するなどしていた。
南達哉社長は「建設業が被災すればインフラ復旧もままならない。初動体制の確保は社会的要請でもある」と語る。
各県によると、中小企業のBCP普及率は岩手が1割強、宮城は3割弱にとどまる。
東北のある県の担当者は「被災現場はまだその段階にないが、今後の復興に合わせ、BCP策定支援を強化したい」と話す。
【斎藤秀之】
[事業継続計画(BCP)]
企業が自然災害、大火災、テロなどの緊急事態に遭遇した際に、損害を抑えつつ早期復旧するための方法、手段を取り決める計画。
優先する中核事業の特定、事業拠点の代替地の準備などが柱となる。
河北新報より
投稿者 trim : 2011年04月03日 10:37