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2011年01月14日

タイガーマスク現象

漫画「タイガーマスク」の主人公「伊達直人」などを名乗った匿名の寄付は、13日も東北各地で相次いだ。

一時的な動きと冷静に受け止める向きも多いが、児童福祉に取り組む団体の関係者は「匿名の善意」の広がりを歓迎し、識者は「善意を持続的に生かせる仕組みをつくるべきだ」と問題提起している。


「見過ごされがちな児童養護施設の子どもたちに注目し、行動してもらえるのはありがたい」。

子どもの福祉・医療・教育の在り方を考える市民グループ「岩手ふつうの会」(盛岡市)の藤沢昇代表(63)は「善意の輪」を評価する。

電話で子どもの悩み相談に応じるNPO法人「チャイルドラインみやぎ」(仙台市)の小林純子代表理事(60)も「児童支援の民間団体の多くは限られた助成金を取り合っているのが現状。人々の善意がつながればいい」と期待を寄せる。

一気に全国各地に飛び火した寄付に「実態は個々の散発的な動きで、一過性のブームに終わる可能性が高い」とみるのは東北大大学院の佐藤嘉倫教授(行動科学)。
「タイガーマスクを媒介に、役に立ちたいという潜在意識が行動に表れているのではないか。実名は出さず、行為自体は注目を集めたいという『劇場型の善意』という見方もできる」と分析する。


最初の寄付がランドセルだったことから、施設などに物品が届けられるケースは東北でも多い。
継続的に路上生活者の自立を支援するNPO法人「ワンファミリー仙台」(仙台市)の関係者は「受け取る側からすれば、用途の広い現金が一番」と打ち明け、「貧困家庭の子どもの環境は表面化しにくく施設の子ども以上に深刻だ」と指摘する。

福島大の丹波史紀准教授(社会福祉・公的扶助)は「施設を出た後、生活の自立で困難に直面する子どもが少なくない。各地の善意を生かす『タイガーマスク基金』のような制度を設け、社会全体で子どもを支えられればいい」と提案する。

「伊達直人」などを名乗った寄付は東北6県で13日夕までに、60件に上ったことが河北新報社の集計で分かった。

9日に花巻市の商業施設で10万円が見つかったのを皮切りに、善意の主や贈り物は多様化している。
受け取った側はおおむね喜んでいるが、匿名の寄付に戸惑いものぞかせる。

県別の寄付は宮城の17件が最多で青森12件、福島11件、岩手8件、山形8件、秋田4件と続く。
差出人は「伊達直人」や「タイガーマスク」「ウルトラマン」など多岐にわたる。
贈り物はランドセルや文具、商品券などのほか、1,000~100万円の現金もあった。
一部には手紙が添えられ、「一生懸命、生きていきましょう」などと記されていた。

贈り先は児童養護施設や児童相談所などが目立ち、青森、南陽両市や伊達署にも寄せられた。
受け取る側の実情を考慮したとみられるケースも多く、施設側は歓迎する。

盛岡市と秋田市の児童養護施設には、新小学1年生の数と同じ数のランドセルが届いた。
盛岡市の施設は「子どもたちは早速、ランドセルを背負い大喜びしている」と感謝する。

「文具はあればあるほど役立つ。子どもたちのために活用したい」とノートや鉛筆が寄せられた宮城県北部児童相談所(大崎市)。

いわき市の施設にはおもちゃなどと交換できる「こども商品券」20万円分が届き、「子どもの希望を聞いて使い道を考える」と話した。

青森県には70代女性から「児童養護施設にランドセルを寄贈したい」と電話があった。
県が「ランドセルは企業から寄贈される」と説明すると、女性は「青森市と弘前市の施設に各10万円を贈る」と申し出たという。

一方、宅配便でランドセル5個が届いた仙台市児童相談所は「ありがたいが、匿名や偽名ではお礼ができず、困っている。子どもにもうまく説明できない」と困惑もうかがわせる。


河北新報より

投稿者 trim : 2011年01月14日 18:50